こうした事態を受けてNHKや在京キー局は、該当するタレントの番組を取りやめたり出演部分をカットしたり、放送内容の変更を余儀なくされた。毎度繰り返されるタレントをめぐる不祥事。だが、情報番組をみながら思うことがある。吉本もテレビ曲も「どうして反社会的勢力の実名をあげないのだろう」。一連の報道はフライデーが口火を切った。同誌は相手が詐欺グループや暴力団のフロント企業など反社会的勢力であると、何らかの形で確認したはずだ。確認したから報道している。同じことはテレビ局もやっているはずだ。宴会の主催者が反社会的勢力であると確認した上で、お笑い芸人の脇の甘さを指摘している。コメンテーターも一緒になって芸人批判を繰り返す。こうした情報の扱い方をみながら思う。どうして芸人に完璧な情報管理を求めるのか。脇の甘さは日本人に共通した資質だ。それ以上に、テレビ局が実名を報道しない限り、芸人が反社会的勢力を認識することは無理だろう、と。

最近、テレビの情報番組を見るとこの話題一色だ。お笑いタレントが事務所を通さず“闇営業”で振り込め詐欺グループなど反社会的勢力の宴会に出演、お金をもらっていたというものだ。フライデーが報道し、吉本興業が雨上がり決死隊の宮迫博之(49)ら所属タレント11人を無期限の謹慎処分にした。これが発端だが、7月に入ってもこの話題がテレビで延々と続いている。吉本興業以外でも同じような“闇営業”が発覚、反社会的勢力と一部タレントの関係を批判する報道があとを絶たない。一部芸人が当初金銭のやり取りはなかった発言していたが、受け取った事実が発覚したことも騒動に拍車をかけているようだ。対象となったタレントを擁護するつもりはないが、批判されるべきはタレントだけか、情報番組を見るたびに疑問が湧いてくる。

吉本興業など芸人を抱える事務所の管理責任もほとんど追求されていない。反社会的勢力、芸能事務所、テレビ局、コメンテーター、芸人…。“闇営業”問題に登場する人々だ。この中で一番弱い立場にいるのはいうまでもなく芸人である。芸能事務所とテレビ局は、反社会的勢力の実名を伏せ自らは安全地帯に身を置いている。そのうえで、芸人に無期限謹慎処分を科し、軽率な行動をこれ見よがしに批判している。コメンテーターはテレビ局に寄り添うだけ。「テレビ局は実名をあげるべきだ」など、気骨のある発言をする人はほとんどいない。吉本興業は安倍首相に近いと指摘するジャーナリストもいる。「フライデー」が実名をあげているかどうか確認してないが、メディアが実名をあげない限り芸人は反社会的勢力を事前に判別できないではないか。それをしないで弱いものいじめはガンガンやる。“闇営業”問題、日本社会の構造を浮き彫りにしている気がする。