昨今の日韓関係はまさに泥沼状態である。お互いに信頼感がないのだから、どんなに話し合っても問題は解決しない。日韓双方とも傷口が広がるだけである。傷口が広がっても喧嘩は止まらない。第三者が仲介に入らない限り、振り上げた拳を双方とも下ろせない。仲介者として期待されている米国も動かない。夫婦喧嘩は犬も食わないのだ。そもそも日本は拳を振り上げたつもりもないだろう。優遇措置を撤廃した3品目について淡々と事務処理を行うだけである。別に輸出を禁止したわけではない。拳を振り上げたのは韓国。米国が動いてくれない以上、WTOに提訴して文在寅(ムンジェイン)政権の正当性を世界にアピールするしか当面打つ手はない。だけどそんなことをしているうちに、8月以降「ホワイト国」の指定が撤廃され、全輸入製品に通常の手続きが適用されるだけだ。

週末に韓国から、サムソンが3品目の手当てにめどをつけたようだとの情報がもたらされた。同社は日本メーカーの海外工場などを通じて3品目を手配する可能性があるとの見方が伝えられている。これが事実かどうかはわかならない。ただ、サムソンの事実上のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は問題発覚直後に来日、日本の関係者との対応を協議した。この間文在寅大統領が主催した対策会議を欠席しての来日だった。ピント外れの韓国政権の対応とは一線を画し、企業防衛のための迅速な行動だった。さすがサムソンのリーダーというべきだろう。それにひきかえ、週末に開かれた日韓事務レベルでの交渉は、韓国側の勇み足だけが目立った。政権が政権なら、官僚も官僚ということだろう。話が通じない。

輸出規制の強化は騒ぐほどの問題ではない。事務的な手続きを一部変更したというだけの問題である。サムソンもSKハイニックスも、韓国半導体メーカーの大半は3品目を通常通り確保できるだろう。ただ、3品目の不正輸出を目的に輸入しようとする企業にとっては、これまでのようには簡単には入手できなくなる。安全保障を目的とした規制とはそもそもそういうものだ。それがこれだけの問題となり、日韓両国のメディアを巻き込んだ騒動となった原因は、双方に取り付いた不信感である。この不信感は文在寅政権が一方的に作り出したものだが、もっと長い目で見れば日本の過去の歴史がその原因を作り出しているとも言える。未来志向型の政治と言うのは簡単だが、肝心の未来は過去に引きずられている。結局、時間が解決するのを待つしかない。だが、時間もまた過去の延長線上にある。