トランプ大統領はきのう、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領から深刻化する日韓関係の仲介に入るよう要請があったことを明らかにした。徴用工問題や日本の対韓輸出規制の強化を巡って、日韓関係が泥沼化している現状を背景に「何とかして欲しい」と“泣き”を入れたのである。このこと自体、打開策もなく追い込まれている文大統領の危機感を表しているようにみえる。それ以上に、こういうニュースに接すると政治家としての文氏の力量を疑わざるを得なくなる。それはともかくとして、このニュースを扱ったメディアにも温度差がある。この記事はニュースの扱い方の難しさを象徴している。

ロイターは「日韓対立解消へ支援の意向」と、大統領が文氏の要請を受けて仲介に入る方針を示したかのような見出しを立てている。これに対してブルームバーグは「トランプ氏不満、時間取られたくない」と、あからさまに不快感を示したかのような見出しだ。日本のメディアは「トランプ氏、日韓仲介の用意、『双方が求めるなら』」(日経)、「日韓双方とも求めるなら仲介も」(産経)、「日韓関係の仲介頼まれた」(朝日)などまちまち。問題はトランプ氏が日韓の仲介に積極的か、消極的か、大統領の発言をどう読み取るかだ。いくつかの記事を読む限り同大統領は文大統領の要請を「迷惑な仕事」と受けとめているように、個人的にはみえる。

ブルームバーグにはトランプ大統領は仲介を要請する文氏に、「なんとたくさんの事に私は関わらなくてはならないのか、と私は言った」とある。さらに「日韓の問題に関わるのはフルタイムの仕事をするようなものだ」とも。そして「彼らが私を必要とするのであれば、力を貸そう」というのである。問題は「彼らが私を必要とするなら」という条件である。この言葉が各紙の見出しに取られて「双方が求めるなら」という前提条件になる。文氏は求めている。果たして安倍首相は同じ要請をトランプ大統領にするだろうか。おそらくしないだろう。現状は文大統領の方が、安倍首相より追い詰められていることを象徴しているようだ。トランプ氏に“泣き”を入れる前に文氏は、問題解決能力が自分にあることを自覚すべきだ。