試合終了後、整列で涙を拭う大船渡・佐々木朗希(左から2人目=カメラ・佐々木 清勝)

◆第101回全国高校野球選手権岩手大会 ▽決勝 花巻東12―2大船渡(25日・岩手県営)

 PL学園(大阪)のエースとして5季連続で甲子園に出場し、戦後最多の通算20勝を挙げたスポーツ報知評論家の桑田真澄氏(51)が25日、岩手大会決勝で花巻東に敗れた大船渡へメッセージをつづった。

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 今日の試合で投げない選択をした大船渡の国保監督と佐々木投手の勇気に、賛辞を贈りたいと思います。

 甲子園を目前にした地方大会の決勝戦で勝つことは、監督・選手を含めてチーム全員の悲願だったと思います。

 また、周囲からの期待もとてつもなく大きかったでしょうから、今回の決断を下すには大きな重圧があったと察します。

 それでもなお、エースのコンディションを優先させたことは素晴らしい判断ですし、日頃から監督が選手を細かく観察し、佐々木投手と的確にコミュニケーションを図っていた証しだと思います。

 恐らく今日の試合以前にも、監督は投手のコンディションとチームの勝利の間で、難しい判断を迫られていたでしょう。

 従って、大会を運営するにあたっては投手起用に関する監督や選手への重圧を取り除いて、目の前のプレーに集中できる環境整備が必要だと思います。

 地方大会も甲子園も大会日程を長く確保することで、投手のコンディションと大会の盛り上がりは両立させることができるはずです。また球数制限などのルールを整備することで、監督をはじめとしたチーム関係者は無用な批判を浴びることなく、自動的に投手を交代させることができるでしょう。

 少子化やアマチュア野球選手数の減少に伴って野球人気の低下が危惧されるいまこそ、無限の可能性を秘めた金の卵を大人たちが大切に育てる姿勢が問われます。

 今日のこの決断を踏まえて、アメリカで普及しているピッチ・スマートのような施策を実行に移せば、日本のアマチュア野球がより良いものになる絶好の機会になるでしょう。

 そんな前向きな議論が活発化することを切に願うとともに、佐々木投手がコンディションを回復させて近い将来、超一流の投手に成長するよう、野球界の先人の一人として応援しています。