【テヘラン時事】イランは6日、核合意から離脱した米国に対抗して打ち出している合意履行停止の第3弾措置として、ウラン濃縮用の遠心分離機に関する研究開発の制限を撤廃した。かねて「選択肢の一つ」と警告していたウラン濃縮度の20%への引き上げは見送ったが、遠心分離機の増設や新型機の開発が進めば、濃縮作業は強化される見通し。合意存続を望む欧州や、イランとの首脳会談を模索する米国から譲歩を引き出したい思惑だが、道筋は不透明だ。

 イランが表明した無制限の研究開発は、ウラン濃縮度のさらなる上昇よりも衝撃度が低く、抑制的な内容との受け止めが広がっている。合意順守の見返りに経済的利益の提供を欧州に求めている協議が大詰めであることも考慮し、米欧の反発を招く濃縮度拡大は得策ではないと判断したもようだ。ザリフ外相は5日、欧州連合(EU)への書簡で「あらゆるレベルで交渉を続ける用意がある」と改めて欧州側の歩み寄りを促した。

 しかし、フランスがイランに提案した約150億ドル(約1兆6000億円)の信用枠を設ける金融支援は、イラン制裁の適用除外を認めたくない米国の了承が得られず難航。欧州の外交努力も奏功しなければ、イラン擁護の機運は急速にしぼみかねない。イランは欧州側に再び2カ月の猶予を与えたが、交渉が進展しない場合、米欧が警戒するウラン濃縮度拡大が現実味を帯びることになる。

 各国・機関からは、合意逸脱を進めたイランへの懸念が相次いだ。EU欧州委員会の報道官は「合意を損なう措置を自制するよう促す」と強調。英外務省も「緊張緩和に努めているさなかの逸脱に失望した」と表明した。イランを敵視するイスラエルのネタニヤフ首相は「今は対話よりも圧力を強める時だ」と訴えた。