ECBが再び金融緩和路線に舞い戻った。昨日行われた理事会で市中銀行が余剰資金をECBに預け入れる際の適用金利である預金金利を、現行のマイナス0.4%からマイナス0.5%に引き下げた。またマイナス金利の拡大に伴う銀行への影響を緩和するため金利階層化を導入した。11月から月額200億ユーロの債券買い入れを行うほか、銀行を対象とした長期資金供給オペ(TLTRO)の条件を緩和する。英国のEU離脱が相変わらず懸念要因で、EU経済の先行き懸念の解消を目的とした金融緩和でもある。だが、量的・質的にいくら金融を緩和しても、実体経済への影響はほとんどない。日本を含め過去の実績が十二分に証明している。にもかかわらずあいも変わらぬ金融緩和。金融政策は堂々巡りを繰り返している。
ECBに続いて米連邦準備制度理事会(FRB)と日銀(JOB)が来週相次いで金融会合を開催する。トランプ大統領は早速「ECBは非常に強いドルに対するユーロの価値を引き下げることに尽力そして成功し、米国の輸出に打撃を与える。FRBは手をこまねいているだけだ。FRBが金を貸して報酬を得る一方、われわれは金利を払っている!」とパウエル議長を攻撃する。景気の先行き懸念の責任はすべてFRBにあるような態度だ。ECBが利下げに踏み切らざるをえなくなった責任の大半は、米中貿易戦争を仕掛けたトランプ大統領にある。臭いものに蓋をして責任をFRBに転嫁する姿勢は如何なものか。そんなトランプ大統領の無茶苦茶な対応を避難するように、外為市場でドルは大統領の意に反して強くなっている。
ドラギ総裁にとってはこれが最後の政策決定への関与ということになる。11月にはラガルド氏が後任の総裁に就任する。理事会後の記者会見で同総裁は「財政政策が主導する時期に来ている」(ロイター)と強調している。ドラギ総裁も好き好んで金融緩和を行なっているわけではない。問題の本質が財政にあることを理解している。だから「財政政策が主要な手段になる必要があると見解で(理事会は)一致した」(同)と追加したのだろう。トランプ氏が隣の芝生をみていうべきことは、「積極財政だから米国の景気は持っている。EUよ、緊縮財政を止めて積極財政に転換しなさい。そうすれば追加関税は検討しなくて済む」。来週開催されるFOMCと金融政策決定会合で日米の金融当局はどんな答えをだすのだろうか。
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