トランプ大統領がまたまたやらかしてくれた。ウクライナ大統領との電話会談で、来年の大統領選の民主党有力候補である前副大統領のバイデン氏に対する疑惑調査を依頼したというのだ。電話会談の記録が昨日公開されたが、民主党は弾劾の動きを強めている。一連の事件の発端は内部告発にある。弾劾が実現するかどうかはわからないが、トランプ大統領にとっては厳しい局面が続くことになる。問題自体は大統領の自業自得といった面があるが、これを告発する高官が政権内部にいることは米国システムの健全性の表れだろう。告発者は直接情報に触れてはいない。周辺から得た情報を元に告発している。日本では考えられないような官僚が米政権内部に入るということだ。

ロイターによると告発者は、「トランプ大統領が職権を乱用し、大統領選を有利に運ぶためにウクライナを選挙に介入させようとしたと指摘。『米国の国家安全保障への脅威』との懸念を表明し、『緊急を要する懸案』に当たる」として告発に及んだようだ。この疑惑の中心人物は顧問弁護士のジュリアーニ氏で、バー米司法長官が関与している可能性も指摘している。内部告発者は米情報機関関係者とされているが、身元は明かされていない。告発内容の大半を「直接目撃したわけではない」としており、同僚から得た情報と説明している。米紙ロサンゼルス・タイムズはトランプ大統領がスタッフに対し、「告発者に情報を提供した人物を知りたい。スパイのようなものだ」と述べたという。まるでサスペンス映画に出てくる親分の脅しのようなセリフだ。

一連の記事をみながらトランプ大統領の大統領としての資質に改めて疑念が湧いた。ホワイトハウスや政権を支える官僚組織とはいえ、大統領に非協力的な人物はいっぱいいるだろう。民主党の党員資格を持つ官僚だっているだろう。大統領というのは、敵に囲まれながら仕事をしているようなものだ。いくら外交機密とはいえ、国家の安全保障を脅かすような事態と判断すれば大統領に逆らって当然だという熱血官僚もいる。そんな中で政敵ともいうべきバイデン氏の疑惑調査を他の国の大統領に電話で依頼する。ど素人が考えてもあり得ない状況だ。トランプ氏というのはひょっとすると正直で思ったことをすぐ口にしてしまう好々爺に過ぎないのかもしれない。だとすればディールはできても外交はできない。大統領としてのセンシティビティに欠けている。