ECBのドラギ総裁が昨日アテネで講演、EU加盟各国の財政出動は十分でないとの見解を示した。そのうえで、「ユーロ圏全体として投資に主導された刺激策が最も効果的な対応となる」と述べ、各国政府に積極財政への政策転換を促した。ロイタイーが伝えている。これより前に同総裁はEU議会で講演し、「MMTのような新しいアイデアについても検討すべきだ」との見解を表明している。ドラギ総裁といえば、EUの景気回復や物価安定を目指した大胆な金融緩和政策を推進してきた人物だ。財政緊縮路線をひた走るEUは、大胆な金融緩和政策を推進するドラギ総裁に依存している。その人物が財政出動を呼びかけている。EUに限らず全世界に浸透している新自由主義的な経済政策に転機が訪れようとしているのかもしれない。

米供給管理協会(ISM)が昨日発表した9月の製造業景気指数は47.8と、前月の49.1から悪化し、2009年6月以来ほぼ10年ぶりの低水準となった。これを受けてニューヨーク・ダウが前週末比340ドル強急落した。トランプ大統領は例のごとくツイッターで「FRBの金利は高過ぎる。FRBは何も分かっておらず、FRBの最大の敵はFRBだ。お粗末なことだ!」(ロイター)と鬱憤ばらしをしている。金融政策で景気が回復すれば誰も苦労しないだろう。トランプ大統領よ、ドラギ総裁を見よ。9月にマイナス金利を拡大し、国債の大量購入を再開したECBだが、それでも景気はよくならない。ドラギ総裁は「財政出動」が必要だと各国に呼びかけている。財政出動を率先しているのはトランプ大統領だ。

ドラギ総裁の人気は今月末で切れる。後任は前IMF専務理事のラガルド氏。同氏がドラギ総裁と同じ認識を持っているかどうかは定かではないが、前任者の退任前の発言を無視することはないだろう。政策転換の兆しはある。EUの緊縮路線を推進するドイツ。最近は各種経済指標が悪化しており、EUの経済基盤にもヒビが入り始めている。先ごろメルケル政権は2023年までの新気候変動対策として総額500億ユーロ(550億ドル)のパッケージをまとめた。この財源として国債の発行も検討された。今回実現はしなかったが、超健全財政のドイツが国債発行を検討したことの意味は大きいだろう。米民主党左派はグリーン・ニューディールの財源を国債て賄うとしている。安倍政権も消費増税を受けて来年度予算の国債増発は必死だろう。