米国のペンス副大統領がきのう、米中の貿易摩擦などをテーマにワシントンのウィルソン・センターで講演した。その中で同副大統領は世界的なスポーツ用品企業のナイキを強烈に批判した。曰く「ナイキは社会正義の推進を売りとしているのに、香港の問題に関してはむしろ社会的良心を取り締まる側にいる」(ロイター)と。ことの発端はプロバスケットチームNBAのヒューストン・ロケッツ。ゼネラルマネジャー、ダリル・モーリー氏が香港の民主化デモへの支持をツイートしたところ、中国側から激しい抗議を受けた。これに対してNBAもナイキもモーリー氏を擁護しなかった。ペンス副大統領はそこに焦点を当てた。
ロイターによると副大統領は、「NBAの一部有名選手やオーナーらは、自分たちの国には言論の自由を行使していくらでも批判するのに、外国の人々の自由や人権になると口をつぐんでしまう。中国共産党の肩を持ち、言論の自由を封じるなど、およそNBAは中国政府の完全子会社のごとき振る舞いだ」と述べた。「完全子会社のごとき振る舞い 」とは強烈である。NBAは中国の批判に対して「選手や職員、オーナーなどの発言を禁じることも、促すこともしない」と弁明した。これを受けてNBAは発言の自由を擁護したと以前このコーナーで書いた。だが、副大統領は積極的に擁護しなかったと批判しているのだ。
中国は国民の幸福よりも共産党一党支配の実効性が優先される国である。ここに中国の最大の“矛盾”がある。一方、ナイキやNBAに象徴される米国はビジネスが優先する国である。ここに米国の体質的な“弱点”がある。これは米国にとどまらない。市場経済をベースとする国に共通する“弱み”である。米中のいがみ合いは“矛盾”と“弱点”の対立でもある。どちらに分があるか、いずれ歴史が判断するだろう。ただ現時点ではっきりしているのは、“弱点”には「言論の自由」という強みがあることだ。世界共通であるべき「言論の自由」を、NBAもナイキもダブルスタンダード化している。ここにペンス副大統領の怒りの根源がある。ビジネスに優先する「言論の自由」、経営者にとっては永遠の課題だろう。
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