安倍晋三首相の在職日数が20日、通算で計2887日となり、憲政史上最長になった。この機を捉えてメディアは安倍政権の検証を行なっている。熱心に目を通したわけではないが、朝日新聞デジタルは長期政権を築いた要因として①有力なポスト安倍候補の不在②弱い野党の存在をあげている。特に異論はないが、もう一つ強いてあげれば「行き過ぎた円高の是正」ではないか。民主党政権政権時代に円相場は一時、1ドル=75円32銭という戦後最高値を更新した。バブル崩壊を受けて不振にあえぐ日本経済に必要以上の円高が追い討ちをかけた。“就職氷河期”という悲惨な状況を招いたのも行き過ぎた円高が一因である。
第二次安倍政権は、異次元緩和と称する大胆な金融政策、弾力的な財政運用、そして成長戦略の策定という三本の矢を掲げて颯爽と登場した。いわゆるアベノミクスである。とりわけ過大評価されていた円相場を「身の丈」にあった円安に誘導した功績は大きい。これによって株価が急騰、目に見える形で日本中に経済再生の期待感が膨らんだ。アベノミクスは、閉塞感に覆われていた日本人を奮い立たせた。とりわけ株価の上昇は、自信を失っていた日本人に目に見える形で経済再生の突破口を切り開いた。ひょっとすると日本経済は本当に復興に向けて動き出すのではないか、そんなワクワク感が膨らんだのである。
一度膨らんだ期待感はなかなか冷めない。「弱い野党」の存在も安倍一強を後押しした。ロケットスタートによってダッシュをつけた経済も、民間企業を中心に業績が回復。バブル崩壊以降を振り返っても、経済的には際立った成果を上げたことは間違いない。スタートの華々しさが多くの日本人に“目くらまし”のような効果をもたらした。長期政権が進むにつれてと地方の衰退は激しくなり、正規雇用と非正規雇用の賃金格差は拡大し、成長率も物価も目標値をはるかに下回っている。貧困層はジリジリと拡大し、一人当たりGDPは中位国の水準まで落ちてしまった。それでも安倍政権に対する批判は「桜を見る会」にしか集まらない。何かが狂っている気がする。真っ当な政策が見当たらない。
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