今朝の新聞に政府・与党が、在職老齢年金の優遇策を見送る方針を決めたと伝えられている。全世代型社会保障検討会の論点の一つで、65歳以上の就労促進を促すために政府・与党は、年金の給付額を減額するための所得基準を現行の47万円から51万円に引き上げる案を提示していた。これに対して与野党を含めて高所得者優遇との批判が出たため、基準額の引き上げを見送ることにしたようだ。「桜を見る会」に野党が批判を強めていることなども影響したのだろう。桜を見る会は早々に来年度の中止を決めた。同様に年金改革でも批判封じのためのスピーディーな対応である。この決定は全世代型社会保障改革の中の些細な決定にすぎない。だが、この決定の裏には高所得者優遇、低所得者無視の安倍政権の基本スタンスが見え隠れしている気がする。
全世代型社会保障改革の目玉は年金、医療、介護の各財政基盤の強化である。デフレ脱却を目指している安倍政権の公約違反が、消費増税同様にこの改革によって公になるはずである。例えば年金財政。少子高齢化の中で「100年安心」を実現するための財政基盤が盤石かといえば必ずしもそうではない。国民皆年金の現行制度は、現役世代が65歳以上の高齢者の生活を支える賦課制度によって成り立っている。要するに現役から高齢者への所得移転が制度の根幹になっているのである。少子高齢化で人口が減っていくわけだから、何もしなければこの制度は財政的に持たなくなる。言葉は悪いが“ネズミ講”のようなものだ。人口が増え続け、経済が永遠に成長しない限り、どこかで制度が行き詰まる。だから政府は5年に一度財政検証を行い、年金制度の財政基盤の強化を図ろうとする。
具体策はいま全世代型社会保障検討会議で検討している。在職老齢年金制度もその一つ。高齢者の年金を減額するための所得基準を引き上げ、給付額(60−64歳)を平年度ベースで約3000億円増やそうとしていたのである。年金財政はこれによって悪化する。だからどこかでこの分の支出増を補う必要がる。その原資をこれまで厚生年金制度の対象外だったアルバイトや低所得者、中小企業に加入を義務付け、保険料を積み増そうというわけだ。日本の低所得者は消費税率の引き上げによって打撃を被り、「100年安心」の社会保障改革によって追い討ちをかけられる。NPO法人・ほっとプラス代表である藤田孝典氏によると、日本では生活できない若年労働者が増えている上、高齢者の貧困率も上昇しているという。生活弱者の実体から目をそらす安倍政権。桜を見る会より問題の根は深い。
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