米国と中国の貿易戦争は先週末に「第1段階」の合意に達した。英国の総選挙ではジョンソン首相率いる保守党が過半数を獲得する大勝利となった。普通ならこれで米中と英国を震源とする不透明感に終止符が打たれても良さそうだが、週が開けても相変わらず不透明感が残っている。どうしてだろうか。第1の要因は米中の間に「第1段」の合意に関する解釈の違いが残っていること。第2は英国のEU離脱は確実となったが、これから始まる貿易交渉が難航しそうだとの予測が強まっていることにある。自由俳人の種田山頭火は「分け入っても分け入っても青い山」と読んだ。取っても取っても増える不透明感。世界経済の見通しが晴れることはない。

ジョンソン首相率いる保守党の大勝利は、個人的には意外感があった。終盤、労働党が追い上げているとの報道が一部にあったせいか、ひょっとすると保守党は負けないまでも苦戦を強いられるのではと思っていた。蓋を開けてみれば完勝である。これで労働党のコービン党首の出番はなくなった。それよりも党首を辞任する意向だと言われており、名実ともにジョンソン首相の時代が始まる。だが、来年1月末にEUから離脱しても、猶予期間はたったの1年だ。この間に英国とEUの新たな貿易ルールを取り決めなければならない。貿易交渉はただでさえ時間がかかる。簡単な作業ではない。この交渉を通して英国とEUの主導権争いが延々と続く。

おそらく来年もメディアのネガティブな報道が続くだろう。同じことは米中の「第2段階」の貿易交渉でも繰り返される。大統領選挙を有利に進めたいトランプ大統領に対して習近平主席は、中国経済の回復を図ろうとするだろう。習主席にとって最大のターゲットは関税の撤廃。一方のトランプ大統領が目指すのは「アメリカファースト」「選挙ファースト」である。お互い相手に勝つことが最大の目標だ。だとすれば、「第1段階」の合意よりも妥協は難しくなる。第2段階に持ち越された課題は、補助金など中国経済の構造問題が絡んでいる。基本的に相容れない米国と中国の経済システム。それを擦り合わせようとする協議が続き、世界中に不透明感が漂うことになる。