日中韓首脳会談を前にきのうは日中、中韓の首脳会談がそれぞれ開かれた。テレビのニュースを見る限り、習近平主席と文在寅大統領の冒頭の握手の方が、習主席と安倍首相の握手よりも穏やかで和やかで、親密だったように見えた。安倍首相と習主席の表情がこわばって見えたのは気のせいか。それはそれとして、40分間の首脳会談は「日中新時代」を象徴するというよりは、そこに向けたハードルの高さを垣間見せてくれた。来春、国賓として来日を予定している習主席、国内には国賓としての来日に異議を唱える勢力が手ぐすねひいて待っている。これが日中首脳会談の雰囲気を必要以上に重苦しいものにしていた。

首脳会談のテーマは時間の割に多かった。以下は日経新聞からの引用。習氏は冒頭「私と安倍首相で緊密な意思疎通を保ち、中日関係を新たな段階に押し上げたい」と表明した。首脳会談らしいスタートだ。これに対して安倍首相は、「日中関係の重要な節目となる来年春の習主席の国賓訪日を極めて重視している」と語った。これは首相の本音だろう。香港情勢、ウイグル族の人権問題、尖閣諸島周辺への中国公船の進入、このところ中国に拘束される日本人も増えている。北朝鮮問題でも中国と歩調を合わせることがきるのか、判然とはしていない。来春、日中新時代を高らかにうたいあげるためにも、懸案はできるだけ除去しておきたい。安倍首相の偽らざる心境だろう。

習主席はだが、さらりと安倍首相に釘を刺す。香港情勢もウイグル族問題も「いずれも中国の内政問題」との認識を示す。内政には口を出すな、おそらくこの時習主席は安倍首相を真正面から見据え、厳しい視線を投げかけたはずだ。国内の批判勢力に隙を見せないためにも、厳しい対応が求められていた。その上で習主席は、一帯一路や人工知能(AI)、ビッグデータの活用など経済面で日本に協力求めた。北朝鮮問題ではロシアと共に提案している制裁緩和への支持を求めたのである。あのトランプ大統領ですら香港人権法案に署名した。国際的には中国に対する人権批判が強まっている。そんなか、日中新時代への道のりは日本にとって“いばらの道”でもある。