厚労省はきのう、人口動態統計の前年比較を公表した。それによると出生数は86万4000人で前年に比べ5万4000人減少した。時事通信によると出生数の90万人割れは、1899年の統計開始以来初めてだという。少子高齢化が急速に進展しているわけだから、こういうことが起こっても別に不思議ではない。ただ、社会保障・人口問題研究所の予測によると、出生数が90万人を割り込むのは21年と見込まれていた。90万人割れという数字そのものよりも、国の機関の推計を上回るスピードで人口減少が続いていること、その事実の方がはるかに危機的な気がする。

安倍首相はいま「全世代型社会保障検討会議」を設置して、持続可能で安心できる社会保障への改革を模索している。内閣府の資料によると、65歳以上の高齢者を支える現役世代(20歳〜64歳)の人数は、1950年(昭和25年)に10人いた。それが、2005年(平成17年)には3人に、2050年(令和32年)には1.2人に減る。これは社会保証・人口問題研究所の推計に基づいた予測である。きのう公表された厚労省の統計は、この予測よりもはるかに速いペースで日本の人口減が進んでいるという事実を立証した。こうなると持続可能な社会保障など考えても意味がなくなる。

要するに制度改革よりも先に日本は、人口で破滅するのではないか。そんな気さえしてくる。人口動態統計の中身をみると、死亡者が前年より1万4000人増えて137万6000人。この結果、年間では51万2000人の自然減となった。結婚は58万6481組で同3000組減少、逆に離婚は20万8333組で同2000組増えている。これでは出生率は改善しない。要するに日本を襲っている現下の最大の問題は、国を支える人口基盤が壊滅的な打撃を受けてしまったことだ。個人的には就職氷河期世代に国も企業も、支援の手を差し伸べなかったことが大きかったと思う。他にも原因は多々あるが、人口が減少する国の未来は決して明るくない、そんな気がする。