けさのYAHOOニュースに「年金の繰り上げ受給を選ぶ人が多いワケ 繰り下げの20倍超」という記事が載っていた。その中に以下のような記述がある。「厚労省の最新データによると、2018年度の『繰り下げ受給者』は全体の1.5%に過ぎない。一方で、『繰り上げ受給者』は30.8%にものぼっており、明らかに後者の方が多いのである」。政府はいま全世代型社会保障改革を検討している。その中にはもちろん年金改革も含まれる。改革のポイントは現在65歳となっている就労機会を70歳まで広げ、70歳までとなっている受給開始年齢の下限を75歳まで後ろ倒しするというものでる。

年金受給者は現在、65歳となっている受給年齢を60歳まで繰り上げることも、逆に70歳まで繰り下げることも可能である。繰り上げると受給額は減り、繰り下げると当然のことながら受け取る額は増える。記事によると「国民年金を通常通りの65才で満額受け取ると、年78万100円。これを60才に繰り上げると54万6070円に減り、反対に70才まで繰り下げると110万7742円に増える」とある。国民から見れば「早く受け取る」か「ゆっくり受け取る」かの選択だが、年金財政を預かる政府からみれば「ゆっくり受け取りましょう」ということになる。そのために高齢者の健康維持と就労機会の拡大を目指している。

だが、現実をみると冒頭にある通り「繰り下げ受給者」より「繰り上げ受給者」の方が圧倒的に多いのである。どうしてこうなるのか。国民の多くが年金制度に全幅の信頼を置いていないことがまず考えられる。それ以上に重要なのは「繰り下げ受給を選ぶ人の大半は、生活に大きな余裕がある人」という視点である。「繰り上げ」と「繰り下げ」の比率がこれほど開いているということは、「生活に余裕のない人」が圧倒的に多いということだ。2000万円問題を持ち出しまでもなく、高齢者は毎月赤字を余儀なくされている。生活に余裕がないのである。こういう現実を無視して、机上の上で年金改革を考えているところに政府や官僚、御用学者やマスコミの致命的な欠陥がある。