今朝のニュースで目に留まったものをピックアップしてみた。「新型コロナウイルスによる肺炎が深刻となっている中国で、ビッグデータをはじめとする最新技術が感染経路の特定に利用されている」(時事通信)。「新型ウイルス感染拡大でワクチン開発の重要性浮き彫りに-武田CEO」(ブルームバーグ)。「上海公衆衛生臨床センターの共同ディレクター、盧洪洲教授は17日、新型コロナウイルスの感染者に対し、すでに回復した患者の血漿を投与したところ、試験的な段階だが効果が出ていると明らかにした」(ロイター)など。最先端の科学技術やワクチンの開発競争も激しくなっている。

ビックデータの活用は中国の得意芸だろう。だが、効用の裏に監視社会の怖さもみえてくる。中国政府の専門家チームに所属する医師は、「ビッグデータに代表される最新技術が『感染者と濃厚接触したことに気付いていない人』の特定に役立っていると語った」。これで感染の拡大が防げれば、新型肺炎のパンデミック化を阻止できる。「中国内には2億台以上といわれる監視カメラが街頭に設置され、体制に反対する動きがないか目を光らせているという。携帯電話の通話や位置情報なども集められ、個人の行動を詳細に分析。この監視システムが感染経路の把握に利用されている」というのだ。感染阻止という効用の裏に、監視強化の恐怖がつきまとっている。

武田薬品工業のクリストフ・ウェバーCEOのインタビューからは、利益を追求する企業のリスクとリターンという悩ましい関係が垣間見えてくる。新型肺炎に効くワクチンをいち早く開発すれば、企業は莫大な利益を得ることができるだろう。企業の社会的責任も含めてワクチン開発は避けて通れない。とはいえ、これには莫大な開発費がかかる。必死の思いで新薬を開発しても、提供するときに新型肺炎が蔓延しているとは限らない。別の感染病が広まっているかもしれない。悩ましい限りだ。新しい治療法や最先端技術には、必ず副作用がつきまとう。それを考えれば誰もが二の足を踏む。それでもやらざるを得ない。新型肺炎が人類を試しているようにすら見える。