新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、解せなかったことの一つはPCR検査が一向に増えないことだった。テレビや新聞などメシアの報道を見ていると、感染症の専門家をはじめ現場のドクター、コメンテーターなどが口を揃えてPCR検査の数を早急に増やすべしと、声を大にして叫んでいた。私自身も全く同感だった。政府はどうして、これくらいのことがすぐにできないのだろう。疑問は一直線に政府や専門家会議批判になった。ところが、きのう、日経新聞の「『疫学調査』優先の誤算、新型コロナ検査数、日本少なく 不安と不満を呼ぶ」を読んで考え方が変わった。まだ単なる仮説に過ぎないが、「PCR検査を抑制したことで、感染拡大がある程度抑えられた」、これが実態ではないか。
この記事を読んだあと、2月25日に新型コロナウイルス感染症対策本部名で出された「基本方針」を改めて読んでみた。そして私自身大いなる誤解をしていたことに気がついた。この基本方針はメディアによって大々的に報道されている。要約すれば感染拡大を抑えるために「徹底した対策」が必要であり、「今後、国内で患者数が大幅に増えた時に備え、重傷者対策を中心とした医療提供体制等を整備する準備期間に当てる」というものだ。問題のPCR検査については「医師が必要と認める」時に実施し、「積極的疫学調査によって濃厚接触者を把握する」とある。重要なのは「積極的疫学調査」という言葉だ。誤解を覚悟でこれを大胆に意訳すれば、「病院には行くな」「検査は受けるな」と言うことである。
勘違いしないでほしいが、現下の医療体制は病院も病床も医者の数も決して多くはない。そんな中で陽性か陰性かわからない人々が競って検査を受けに病院に行けば、導線もはっきりしていない病院で院内感染が発生する可能性が高くなる。感染者の8割は症状もなく回復している。仮に陽性が判明しても治療薬があるわけではない。ワクチンもまだ開発されていない。手当の仕様がないのである。そんな中で不安だから検査してほしいと言う希望を受け入れていたら、診療体制は明らかに崩壊する。そうなれば重症者の手当もできなくなる。武漢やイタリア、イラン、韓国では検査の数は増えた。だが、診療体制は逆に崩壊した。できるだけ病院には行かない、感染しそうな場所には行かない。これが一般の国民にできる最大の感染拡大防止策ではないか。
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