トランプ大統領が進めている新型コロナ対策の第3弾は総額1兆ドル(約107兆円)程度で、日本の国家予算に相当する規模になりそうだ。安倍首相が推進する各種対策についてちょっと前にtoo little too lateと批判した。これに倣って言えばtoo big too fastということになる。何事も早ければいいという訳ではないが、早いに越したことはない。リーマンショックの時にオバマ大統領が策定した緊急対策の総額は7800億ドルだった。この時は前任のブッシュ大統領がまとめた素案を引き継いだが、今回の第3弾は間違いなく過去最大の緊急対策となりそうだ。
中身がまた凄い。家計を対象に5000億ドル(約53兆円)を現金給付するという。民主党が富裕層を外すよう主張しており最終決着がどうなるか不確定要素はある。ムニューシン財務長官は早ければ3月中に最初の給付を行い、4月に第2弾の給付を実行する意向を示している。遅くとも4月、5月には53兆円の現金が各家庭にばら撒かれる。かつてバーナンキFRB議長が指摘したヘリコプターマネーの実現でもある。これが実現したあとの米国経済の回復過程や、物価に与える影響、国内総生産の推移などは後々の経済学の参考資料になるだろう。大胆な政策が単純に良いという訳ではないが、too big too fastの政策対応が米国経済のレジリエンス(強靭性)の源になっていることは間違いない気がする。
対する日本はどうか。NHKによると「政府・与党内では消費を下支えするため現金給付や商品券のお配布を行うなどの案が出ています。また、支給する額はリーマンショックの際の1人1万2000円を超える水準を求める意見もあり、今後、調整が行われる見通しです」とある。またまた商品券か、これを見ただけでなんとなくうんざりしてしまう。問題は消費税だが、一定期間これを凍結するとか減税するといった案は、現在の政府・与党からはおそらく出てこないだろう。政策を担当する日本の主流派には発想のレジリエンスが全くない。完全に行き詰まっている。それどころか、行き詰まりのはけ口を低所得者層に求めている。世も末だが、それを覆し政権を担いうる野党も見当たらない。新型コロナよりもこっちの方が恐ろしい。