志村けんが新型コロナウイルスに感染して逝った。まだ70歳だった。日本を代表するタレント。いや世界に通用するコメディアンだった。盟友の加藤茶がコメントした。「ドリフの宝、日本の宝を奪ったコロナが憎い」。その通りだ。早すぎる犠牲に言葉もない。「8時だよ!全員集合」「ヒゲダンス」「アイーン」「変なおじさん」「バカ殿」などなど、志村けんのキャラクターが次々と頭の中を駆け巡った。子供からお年寄りまで、これほど愛されたキャラクターは珍しいと思う。おそらくその裏には、志村けんの人間性が隠されていたのだろう。世界中が新型コロナで右往左往する中で、その危険性を自ら証明するように逝った。ただただ合掌するしかない。

NHKがインタビューした20歳の男性は、「まだ実感はわかないですが、喪失感があります。新型コロナウイルスでこうして身近に感じる方が亡くなられると状況が迫ってきている実感があり、気を引き締めないといけないと思います」と話していた。志村けんは変なおじさんのふりをして、最後の最後まで日本中の人々に警告を発していたのかもしれない。このあまりにも悲しい訃報によって日本人の、特に若者たちの行動に変化が起これば、志村けんは歴史に永遠にその名を刻むことになるだろう。安倍首相が言っても、小池都知事が警告を発しても一部の人にはそのメッセージは届かなかった。そんな中で志村の死によって「行動変容」を起こす人がいるとすれば、志村けんはタイミングを選んで旅立ったことになる。志村けんは最初からそんな宿命を負っていたのかもしれない。そんな気がした。

当の小池知事はテレビの取材に応じお悔やみの言葉を述べている。最後に「コロナウイルスの危険性についてですね、しっかりメッセージを皆さんに届けてくださったという、その最後の功績も大変大きいものがあると思っています」と。だが、この「功績」という言葉にネットが反応した。ハフポスト日本語版によると「すごく違和感がある」「“功績”という表現でまとめるのは安易すぎる」「人の死を注意喚起に利用している」など批判が上がった。志村を愛するがゆえの批判だろう。それもわかる。一方、小池都知事は志村への感謝の気持ちを込めたかったのだろう。そこにも一理ある。それだけコロナの脅威が尋常でないということだ。タイミングを選らんだかのように逝った志村けんに、改めて合掌。