参院本会議で改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく政府対策本部の設置について報告する安倍晋三首相=3日午前、国会内
参院本会議で改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく政府対策本部の設置について報告する安倍晋三首相=3日午前、国会内

 新型コロナウイルスの感染拡大などをめぐり質疑が行われた2、3両日の衆参両院本会議で、安倍晋三首相は焦点となっている緊急事態宣言の発令に慎重な姿勢を崩さなかった。宣言は私権制限を伴う重い判断となるが、医療関係者や地方自治体からは発令を求める声が出ており、首相は難しい対応を迫られている。

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 「全国的かつ急速なまん延という状況には至っていない」。首相は3日の参院本会議で、緊急事態宣言発令の要件は満たしていないとの認識を重ねて示した。「必要な状況になればちゅうちょなく行う」とも語った。

 緊急事態宣言は改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく措置で、首相が地域と期間を定めて発令する。対象地域の都道府県知事は外出自粛の要請やイベント中止の指示などが可能となる。感染者数が増え、医療崩壊への懸念が高まっている東京都の小池百合子知事は3日の記者会見で「(宣言を)出すと都にとって大きなパワーになる」と語った。

 日本医師会は1日、一部地域での病床の不足を踏まえ、「医療危機的状況宣言」を発表。医師資格を持つ国会議員でつくる超党派議員連盟でも3日の会合で、発令を求める声が相次いだ。財界内にも「さらなる外出抑制には緊急事態宣言しかない」との意見がある。

 しかし、政府内では慎重論が強い。宣言が発令された場合、自粛ムードが一層高まり、日本経済へのさらなる影響は避けられない。政府関係者は「経済への打撃を考えたら、そう簡単にできる話ではない」と語る。

 野党からも「宣言を出さない理由が理解できない」(立憲民主党の枝野幸男代表)との声が上がるが、「補償とセット」との意見が大勢だ。これに対し、首相は3日の参院本会議で「個別の損失を直接補償することは困難だ」との認識を示した。ただ、「自粛」頼みの状況が続けば、事業者などの政府への不満がさらに強まる可能性もある。

 首相は緊急事態宣言について、感染状況を注視しながら慎重に判断するとみられる。しかし、今後感染拡大が地方都市にも飛び火すれば、「全国的なまん延」となりかねない。このため、自民党内からは「来週にも宣言があるかもしれない」(幹部)との観測も出ている。