けさニュースを見ながら嫌な予感が頭をかすめた。「ひょっとすると最悪の事態は避けられないのではないか」、そんな思いだ。ロイターが毎日「情報BOX」という決まりものを配信している。前日にあった新型コロナ関係のニュースをサマリーにしてまとめたものだ。毎日膨大な量になっている。当サイトもできるだけ取り入れるようにしている。15日分には新型コロナがピークを超えたとの観測がいくつも掲載されている。例えば、「ニューヨーク州で新型コロナ危機がピークを迎えた可能性を示す新たな兆候」などといった具合だ。ロイターに限らない。感染のピークアウトを先取りした記事は昨今、ちまたに溢れるようになってきた。

問題は楽観論ではない。ムード先行のピークアウト論を受けて、世界中で政治が感染防止から経済活動再開へ動き始めたことだ。その筆頭は米国だ。ニューヨーク州の活動再開に向けてトランプ大統領とクオモNY州知事が権限争いをしている。ブルームバーグによると「誰が米経済活動を再開させる権限を有するのかを巡り、トランプ米大統領とニューヨーク州のクオモ知事が論戦を繰り広げた。クオモ知事はCNNとのインタビューで、『ニューヨーク州の住民の公衆衛生が脅かされるような活動再開を大統領が命じるなら、私は従わない』と発言。『トランプ氏は国王ではない。大統領だ』と指摘した」という。クドロー国家経済会議委員長は、大統領が数日内に指針を発表するとしており、活動再開に前のめりになっている様子がうかがえる。

国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長は14日、新型コロナウイルス感染拡大でほぼ休止状態となっている米経済活動を5月1日に再開する目標は「やや楽観的すぎる」と警鐘を鳴らした。トランプ大統領が初期対応を間違えたことが、いまのNY州のオーバーシュートに繋がっている。大統領は当初、中国のコロナ対策をベタ褒めしていた。その大統領が最近はもっぱら中国批判に徹し、きのうはついにWHOは中国寄りだとして、資金拠出を停止すると発表した。責任逃れの便法だろう。経済再開を急ぐ裏には失点回復の思惑も見え隠れする。感染拡大に向けて引き締めを図る専門家、どちらの言い分を信じるだろうか。答えは明らかだ。にもかかわらず無理を通そうとする政治。これが嫌な予感の原因だ。