安倍首相が16日、新型コロナ対策として所得制限なしに国民一人一人に10万円を給付することを決断した。これを巡って今朝のメディアには「リーダシップに陰り」「内閣総辞職に値する」など様々な見解が飛び交っている。だが、そんな議論以上に筆者の関心を引いたのは時事通信が配信した次の記事だ。「『コロナ禍は第3次大戦』 安倍首相、田原総一朗氏に伝える」。この中で首相は「コロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦であると認識している」と述べている。また、大都市のロックダウンなど私権を制限する強制的な対策については、「それをやると圧政になる」との認識をしている。首相と田原氏の面談は今月の10日となっている。
コロナウイルスと戦うためには、交通機関の強制停止や飲食店の営業停止、外出禁止など私権を制限する強制的な対策が必要だと、筆者は個人的に考えている。どうしてそこに踏み切らないのか、踏み込まないまでも最悪の事態を想定して議論ぐらいはすべきではないか。この件について首相はどう考えているのか、念のため田原氏のサイトで確認してみた。「こういう時に、罰則規定をもうけないのが、戦後日本の体制である。それをやると圧政ということになる」と答えている。これを受けて田原氏は「戦前の日本は、国に強い権限を持たせたことが、戦争という大きな過ちを生んだ。だからこそ、戦後日本は、民主主義、地方分権とし、国の権力を抑える国として復活を果たした。それはもちろんよいことなのだが、こうした『戦時』の場合は、舵取りが難しいであろう」
その通りだろう。戦後70年、日本の思考は「国の権限」を抑えたところで停止している。集団的自衛権の行使緩和を盛り込んだ安保法の改正では、野党が「戦争法案」と叫んで反対した。2012年、民主党政権時代に成立した特措法は「私権制限の排除」がベースになっている。感染阻止にむけてビックデータを活用するためには、一時的に個人情報保護法に守られた私権に制限を加える必要がある。交通機関を遮断し、外出禁止、営業停止といった強権的な措置も、ウイルスという敵と戦うためには時に必要になる。個人情報の保護を盾に、ナンバーカードの登録者がいまだ15%に届かない国である。過剰とも言うべき私権の保護意識が、国民一人一人の命を危険にさらしている現実にもっと目を向けるべきではないか。
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