4月7日に安倍首相が特措法に基づく緊急事態宣言を発令してから、きょうでちょうど2週間が経つ。今週、感染者の数が顕著に減らない限り、新型コロナ禍の長期化は避けられないだろう。先週までの状況を見る限り感染は東京や大阪といった大都市から、周辺の中小都市に逆に広がっているように見える。人と人との接触を「最低7割、できれば8割削減した」という首相の要請は、国民へのお願いがベースになっており、はっきりいって神頼みに近い。いますぐ強権を発動せよといっているわけではない。感染防止に向けて何をどうするのか、感染対策の狙いをもっと明確にする必要があるような気がする。

この週末、ネットの情報を観ながらなるほどと思ったことがある。人・人感染を避けるために世界中でマスクの着用、手洗いの励行、消毒、ソーシャル・ディスタンシングといった対策が取られている。極めて大事な対策だ。これによって人・人感染の多くが防げると考えられている。人・人感染の経路をもう少し具体的に示したのが中央大学特任教授で工学博士の武田邦彦氏だ。同氏は人・人感染の実態は人・物・人感染だと指摘する。ウイルス保有者がドアノブに触り、非感染者がそこに後から触れる。こうしてウイルスは人・物・人へと移動する。公園で遊ぶことより、公園のトイレに入ることが感染の可能性を高める。新幹線、スーパー、コンビニなどトイレはどこにでもある。

人・物・人感染を防ぐ最良の手段は「触らない」ことだ。3蜜を避けることも大事だが、できる限り物に触らないこと。これが重要になる。週末スーパーに買い物に行ったが、そこで観た光景は実に恐ろしげだった。玉ねぎ、人参、ジャガイモなど野菜を求める消費者は、一個売りだろうが袋売りだろうが、取っ替え引っ替え商品に触って品質を確かめている。これを観ながら思った。感染対策のヒントは生活の中にある。ウイルスの感染を防ぐためには3蜜を避けると同時に、「触らない」ことが重要だ。専門家や政府、政治家、官僚など対策を考える人たちには生活感のない人が多い。国民の行動に目を凝らして考えるエリート、いまの日本に最も必要な人材は国民の生活を実感できる指導者だろう。