トランプ政権と議会関係者は昨日、新型コロナ対策第4弾となる緊急経済対策で合意した。総額は4800億ドルに達する。日本円にして52兆円弱だ。日経新聞によると、第1弾から第4弾までの対策は「財政出動の規模で3兆ドルに近づく」とある。日本円で324兆円に迫る規模だ。これは日本の国家予算の3年分、GDPの6割近い規模になる。それだけではない。トランプ大統領はきのう、「地方でのインフラ投資や給与税の減税など、次策の議論を開始する」と第5弾の策定に意欲を示した。新型コロナの脅威を背景に、空前絶後の経済対策が動き出している。これ自体が市場経済と国家の関係を根本から覆しそうな気がする。

第4弾に盛り込まれた対策の主なものは中小企業対策とウイルス検査体制の強化だ。中小企業対策は第3弾に「給与支払いを補填する3500億ドルの雇用対策」(日経)が盛り込まれている。この分はすでに使い果たしており、民主党の要求も踏まえて新たに策定したものだ。金額的には3800億ドルが追加計上された。第3弾、第4弾の合計は7300億ドルになる。大統領選挙を控えていることもあるだろう。議会は与野党を超えて中小企業の救済に前向きだ。日経新聞には「従業員500人以下の中小企業が主に対象で、全米の雇用の5割弱を占める。対象企業は500万社とされるものの、これまでの支給は160万社にとどまっていた。中小企業向けには緊急補助金も600億ドル追加する」とある。

米国のスピード感に遠く及ばないのが日本とEUだ。日本のことはさておき、EUはイタリアやスペインが主張している「EU共同債」(コロナ債)の発行で意見が対立している。EUもコロナ対策を軽視しているわけではない。すでに総額5400億ユーロ(約64兆円)の対策で合意している。だが、対策の柱はドイツが推奨する「欧州安定化メカニズム(ESM)を活用し、最大2400億ユーロ相当の与信枠を提供する」という既存の枠組みだ。コロナの脅威に直面してもなお健全財政か積極財政か、神学論争が続いている。「アベノマスク」の日本はどうか。所得制限なしの10万円給付は決まったが、中小企業やフリーランス対策は一向に進展しない。日欧の政治家は、この期に及んでどこに焦点を当てているのだろうか。