読売新聞が8日〜10日に行った世論調査の結果が同社のWebサイトに掲載されている。それを見ると「緊急事態宣言の延長」に関しては「評価する」が81%、「評価しない」が12%で圧倒的多数が評価している。ところが、「日本政府のこれまでの対応」については「評価する」が34%にとどまっている半面、「評価しない」は58%と過半数を大きく上回っている。緊急事態の延長を決めたのは安倍政権である。安倍首相の決定を大多数の国民は評価している。ところが、安倍政権の評価となると途端に評価は下がる。この相反する評価をどう見るか、個人的には完全に「腑に落ちる」。この落差が安倍政権に対する“イライラ感”の源泉なのだ。

国民の多くは新型コロナウイルスの感染拡大に対する危機感を十二分に理解している。専門家会議や安倍首相が強調する「新しい生活様式」は、決して新しくはない。すでに多くの国民が理解しかつ進んで実践している。中国や欧米のような悲惨な状況を避けるために、自主的に率先して実行しているのである。にも関わらず専門家会議は、「感染数は減っているが、新たな拡大に備えて新しい生活様式を徹底すべきだ」と訳知り顔に押し付ける。安倍首相に至ってはあれだけ批判された“アベノマスク”を外そうともしない。日々刻々変化する事態に臨機応変に対応しようとする姿勢がまったくないのである。そしてアベノマスクを通して発する言葉は、「新しい生活様式の徹底」と専門家会議のまるでおうむ返しだ。

緊急事態宣言の延長問題で出口戦略が大きな問題となった。大阪府の吉村知事が「政府がやらないなら独自に策定する」と宣言して大阪モデルを作った。これに対して西村担当大臣がイチャモンをつけた。特措法の解釈では西村大臣が正しいのだろう。だが、そこが問題の本質ではない。緊急事態の再延長に向けて出口戦略をどう描くか、国民が期待したのはこの1点である。だが、専門家会議の分析・提言には出口戦略のでの字も載っていない。世界中が出口戦略の策定と実行で苦吟している時にである。日本政府にもそうした発想はまるでない。行動変容一点張りだ。安倍政権も専門家会議も国民の実像を知らなすぎる。読売新聞の世論調査が炙り出したのはそうした実態だろう。どうやら安倍政権の“出口”が見えてきたような気がする。