【ワシントン時事】米宇宙企業スペースXの宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げ成功は、民間企業が人工衛星打ち上げや物資輸送だけでなく、有人宇宙飛行にも参入する「新時代」の到来を印象付けた。ロシアや中国との宇宙進出競争が激化する中、米国は官民タッグという新しい陣容で主導権を確保する考えだ。
民間初の有人宇宙船打ち上げ 米国土から9年ぶり―トランプ氏「新時代開幕」宣言
「宇宙で2番手では、地上で1番手になれない」。トランプ大統領は30日、フロリダ州のケネディ宇宙センターでクルードラゴンの打ち上げを見届けた後、関係者や報道陣らを前に強調。打ち上げ成功で「米国は世界の指導者としての名声を取り戻した」と宣言した。
2011年のスペースシャトル退役後、米国は国際宇宙ステーション(ISS)への要員輸送をロシアの宇宙船「ソユーズ」に依存。トランプ氏の言葉には、そうした現状を打破したいという思いがにじむ。中国も昨年1月に世界で初めて月の裏側に無人探査機を着陸させ、宇宙開発をめぐる国際競争が激しさを増している。
宇宙軍を創設するなど、宇宙空間での優位維持を目指す米国にとって、最大の課題は「財政の壁」だ。米国では実際、ブッシュ(子)政権が04年に有人月探査再開を盛り込む「コンステレーション計画」を打ち出したが、オバマ政権が10年、予算超過や遅延を理由に中止した。
新型コロナウイルス対策による財政出動と税収の落ち込みで、米国の財政は悪化が不可避。使用ロケットの再利用などで低コスト化を進める民間との協力は「納税者の負担を抑えてロケットや宇宙船を利用する」(トランプ氏)上で、今後さらに重要性を増すとみられる。
米航空宇宙局(NASA)は24年の実現を目指す人類の月面再訪で、まず月周回軌道上に小型宇宙ステーション「ゲートウエー」を建設し、探査の常設拠点とする計画。月面着陸にはNASA開発のロケットと宇宙船を使う方針だが、ゲートウエー建設の部品運搬に民間宇宙船を活用する考えだ。