新日鉄住金(現日本製鉄)に対する損害賠償訴訟で、韓国大法院判決後に記者会見する元徴用工ら(2018年10月、ソウル、東亜日報提供)

 韓国大法院(最高裁)が元徴用工訴訟で日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた問題で、大邱地裁浦項支部が韓国内資産の差し押さえ命令決定を同社に伝える「公示送達」の手続きを取ったことが3日、分かった。資産を売却して賠償に充てる「現金化」の手続きが一つ進んだ形だ。元徴用工訴訟で差し押さえ資産をめぐり公示送達の手続きが行われたのは初めて。

 外国での訴訟手続きに必要な書類は外交当局を経て当事者に送られるが、日本製鉄には届いていない。原告側は、日本政府が書類の受け付けを拒み、現金化の手続きを遅らせていると主張していた。

 公示送達は、当事者に書類が届かなくても裁判所が一定期間、書類を公開することで届いたとみなす仕組み。今回は1日に命令決定書の公示送達が行われ、8月4日になると日本製鉄に決定が伝えられたとみなされる。ただ、公示送達の効力が発生して売却命令が出たとしても、実際に資産売却が終わるまでには時間がかかるとみられる。

 元徴用工問題について日本政府は、日韓請求権協定で解決済みとの立場をとり、韓国側の責任で解決策を示すよう求めている。安倍晋三首相は昨年12月の日韓首脳会談で「現金化されるような事態は避けなければいけない」と述べていた。

 茂木敏充外相は3日夜のBSフジの番組で「現金化が行われたら深刻な事態になる。その前に問題を解決しなくてはいけないと(韓国側に)何度も強調している」と語った。同日、韓国の康京和(カンギョンファ)外相と行った電話協議でも、同様の趣旨を伝えたという。(ソウル=神谷毅)