けさのニュースで「えっ!」と思ったのは、スウェーデン政府のコロナ対策責任者である疫学者アンデシュ・テグネル博士が地元ラジオのインタビューで反省の弁を述べたとのニュースだ。時事通信によると、「われわれの取った行動には明らかに改善すべき点がある」と反省の念を示したとある。NHKは「今よりも、もっとうまくできたはずだ」と述べたと伝えている。こちらは反省というよりは「もっといいやり方を模索する」と前向きな姿勢にも感じられる。集団免疫の獲得を目指しロックダウンも学校閉鎖もしなかったスウェーデン方式には賛否両論がある。個人的にはかなり注目していただけに、この発言は気になった。

NHKは前段の発言のあと、「対策が十分ではなかったと認めました」と指摘している。反省という言葉は使っていないものの、それに近いニュアンスであり、見出しを取るならこちらもやっぱり反省ということになるだろう。スウェーデンの感染者は直近で「4万人を超え、死者も4500人以上」(NHK)に達している。他のヨーロッパ諸国に比べれば圧倒的に少ないが、死亡者が高齢者施設に集中していることから国内外に批判する声がある。パンデミックが始まった初期の頃、在スウェーデンの日本人科学者・山内正敏氏のリポートを読んだことがある。そこには「統計に基づく30年以上先を見据えた長期的視野がある」とあった。ロックダウンや外出禁止の弊害に専門家は配慮しているというのだ。

「(都市封鎖などによる)精神的なステトレスは、アルコール依存症や鬱などを引き起こして一部の人の寿命を縮めるだろう」ー要するに疫学の専門家は感染症にとどまらず、それがもたらす社会的な影響にも目配りすべきだという指摘だ。そこから導き出された結論が「集団免疫」の獲得であり、穏やかな感染防止対策だった。だが、そこにも反省が必要だという。都市封鎖という強硬な対策と、スウェーデン方式の柔軟な対策の間に答えはあるのかもしれない。そうなると緊急事態は宣言したものの、自粛要請を柱にPCR検査も絞った日本のやり方、いわゆる「日本方式」が俄然注目を集めることになる。山中伸弥教授が指摘する日本方式を成立させた「ファクターX」をきちっと整理することが、感染予防という面でより重要になるような気がする。