これは米国でいま流行っているスローガンらしい。日本語に訳せば「警察予算の執行停止」とでも言うのだろうか。英語の表記は「DEFUND THE POLICE」だ。T シャツにこの標語をプリントしてデモに参加している若者が多い。白人警官がジョージ・フロイドさんを死亡させた事件のお膝元・ミシガン州。同州の「ミネアポリス市議会は同市警察を段階的に解体し、治安維持を図る新たな仕組みの創設を支持している」(ロイター)という。「DEFUND THE POLICE」は警察そのものを壊滅させそうな勢いだ。そうした動きを含めてメディアは、トランプ大統領が一連の事態を世論工作用の“武器”として利用していると批判する。

DEFUNDを辞書で調べてみた。一般的には「出資を取り消す」といった意味で使われる。警察をDEFUNDせよ、と言っているわけだから、予算の執行停止、あるいは予算の取り消しといった意味だろう。トランプ氏はバイデン氏がこの動きを扇動していると、自ら世論を煽っている。米共和党の重鎮であるミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事はマスクをつけてデモに参加している。そればかりではない。来るべき大統領選挙ではトランプ氏に投票しないと公言している。もう一人の重鎮である元国務長官のコリン・パウエル氏も「バイデン氏に投票する」としている。デモは黒人に対する人種差別に抗議するもの。この動きが拡大するにつれさまざまな思惑、それに絡んだいろいろな動きが重層的に絡み合って複雑化してきている。

言葉の意味はどうあれ、黒人に対する過剰な警察権力の行使に対して厳重な抗議の意味を込めているのは間違いない。この言葉と対になっているのが「BLACK LIVES MATTER」(黒人の命の問題だ)」という表現だ。黒人に対する差別だけではない。命の大切さを問うているのだ。黒人であれ白人であれ、人種や宗教、民族を問わず一人一人の命の大切さをもう一度考えよう。そんな思いが一連のデモには込められている気がする。今回の運動の提唱者の一人はABCテレビのインタビューに次のように答えている。「われわれが言うディファンドとは、地域社会が必要としているリソースに資金を投じることだ」(ブウームバーグ)、その通りだと思う。