高市総務大臣がきのうの記者会見で、マイナンバーに銀行口座を1つだけひもづける検討を指示したことを明らかにした。特別定額給付金(一人当たり10万円給付)の申請事務が混乱したことを背景に、国から国民一人一人への現金給付をスムーズに行うための処置だと説明している。マイナンバーに銀行口座をひもづけることに反対と言うわけではないが、これでは問題解決にならない。持続化給付金、雇用調整給付金、家賃支援給付金などコロナ対策として予算化された(されようとしている)各種給付金事業がスムーズに進むないのは、アナログをベースにした政府の事務処理そのものにある。そこに手をつけない限り、何をやっても「後手後手」との批判はつきまとう。
マイナンバーの問題は、何よりもまず「任意のカード」に過ぎないという点だ。嫌な人は登録も申請も必要ない。コロナ禍の襲来でこのところカード申請が急増しているという。それでも現時点の登録者は国民全体の20%を超えた程度だろう。まずやることはマイナンバーの義務づけだ。次に必要なのは住民票との自動照合だ。このカードの最大のメリットは「本人確認」ができることだ。スマホで給付申請した中身を人手で住民票と照合するといった作業は時代遅れ以外の何物でもない。行政のITリテラシーを高めるには政治家の先見性と、これに基づく的確な指示が不可欠。銀行口座のひも付けだけを義務化したところで、全体の事務処理は決してスムーズには流れない。マイナンバー1つで各種の行政事務が自動的につながることが何よりも大事だ。
個人情報の保護とどうやって折り合いをつけるか。これは簡単ではない。口座のひもづけ義務化というやり方は個人情報保護と真正面から対立する。特別定額給付金をスマホで申請した経験からしても、銀行口座はその都度申請すれば済む。マイナーポータルを使えば申請そのものはさほど難しくはない。問題は申請項目ではなく、スマホやパソコンの高度な機能に依存していることだ。これでは高齢者やデジタルデバイスが嫌いな人たちは使えない。スピード感を持って給付を実現するためにはITの活用が不可欠。そこをどう乗り越えるか。政府と個人を結びつける鍵は、「誰でもが簡単に使えるシステム」をつくることだ。政府の対応を見ていると、この道は果てしなく遠いようにみえる。
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