けさニュースをみて「おやっ」と思ったのは、ロイターが配信した「米、国内企業とファーウェイの協力容認 5G基準作りで」という記事。米中関係が深刻さを増す中で、米国のファーウェイ排除は異常ともいうべき執念深さで推進されている。昨年同社をエンティティーリストに掲載、米国企業が直接同社と取引することを禁止した。先月の15日には外国企業にもこの措置を拡大した。米国の企業が提供した技術やソフトを利用して半導体などを作っている企業に対して、同社との取引を禁止したのである。高集積半導体の世界シェア9割を握るTSMC(台湾積体電路製造)は。米国の意向を受けてファーウェイとの取引を停止すると発表している。

ファーウェイといえば5G。高精度で安価な基盤は世界中から引く手あまた。これに待ったをかけたのがトランプ政権だ。その政権が舌の根も乾かぬうちに米国企業と「ファーウェイの協力容認」を打ち出したのだから、誰が見ても「おやっ」と思う。ロイターによるとこの件に関してロス商務長官は、「米国の国家安全保障や外交政策で国益を守りつつ、米国の技術が国際標準となるよう国内産業が全面的に関与することを推進していく」と取引解禁の理由を説明している。要するに最先端技術の標準化についてはファーウェイとの取引を認めるという。米国がこの分野に参加しないと、同社主導で標準化がすすんでしまうリスクがあるようだ。ファーウェイ排除の基本は変わっていないという。

安全保障の専門家である江崎道朗氏によると、トランプ政権は中国と習近平政権を分けて考えているという。経済関係だけをみても米中の貿易額は並外れて大きい。米国にとっても中国は大事な取引先であることに変わりはない。問題は貿易黒字が中国に圧倒的に偏っていることだ。年間40兆円を超える対米黒字を背景に中国は、人民銀行が人民元を発行して世界中にばらまいている。一帯一路をはじめ西沙、南沙、尖閣諸島で領土的野心を強め、香港、台湾で一国二制度を形骸化しようと企んでいる。これにストップをかけるためにトランプ政権は、真綿で首を締めるようにジワジワと中国包囲網を築いているという。日本も当然含まれている。同氏によるとこれは「詰将棋」。時間がかかってもいずれ「詰む」という。