新型コロナウイルスは世界の経済政策を激変させる可能性を秘めている。アフターコロナを巡ってすでにいろいろな議論が始まっている。コロナの感染防止は先手必勝。それにならって言えば、アフターコロナの経済政策は輸出主導から内需主導へということになるだろう。世界中で成長率がリーマンショックを上回る落ち込みを示している。そんな中で日本がコロナの感染拡大を抑制できたとしても、世界中の感染が収まらない限り輸出主導の回復には相当時間がかかる。それを勘案すれば当面は内需拡大が重要だ。輸出主導から内需拡大へ、経済政策をどうやって切り替えていくか、政策当局ならびに政治の大きな課題になるような気がする。

日本総研の牧田健主席研究員はこの点に関して面白い指摘をしている。「各国経済は大規模なネガティブショックの後、往々にして潜在成長率が大きく落ち込んできた」と指摘する。その原因は企業部門がストック調整に重点を移し、家計部門は雇用調整の影響を受けるためである。結果的に投資と消費が落ち込み、潜在成長率が低下する。低下にとどまればいいが、マイナスに落ち込むような事態になればデフレの再燃である。ネガティブショックの影響は民間の債務比率が高い国ほど大きくなる。それはどこか。先進国の中では米国とフランスであり、もう一つは中国である。日本はどうか。世界経済の低迷にともなう原油安が交易条件を改善するため、「成長率押し上げに作用する可能性もある」という。

それ以上に興味深い指摘は、「これまで成長力を抑制してきた債務圧縮、投資慎重化によって、(日本は)ポストコロナ時代を迎えるにあたって、過度な調整圧力を抱えていない」という分析である。日本のデジタル競争力ランキングは世界で23番目という調査もある。要するに世界に遅れをとっていた日本に復活の可能性があるというのだ。狐につままれたような気がしないでもないが、筆者も以前から日本には潜在的な成長力があると思っていた。バブル崩壊によるバランスシートの圧縮でディスインフレを余儀なくされてきた日本。その効果で今回は調整圧力が少ない。財政の思い切った出動もある。内需拡大を主体にした経済運営に徹すれば、日本経済の再生も可能かもしれない。ふとそんなことを考えた。