イージス・アショア

新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画の停止をめぐり、河野防衛大臣は25日午前、自民党の安全保障に関する会議に出席し、政府が24日開いたNSC=国家安全保障会議で山口県と秋田県への配備を断念したことを明らかにしました。

「イージス・アショア」の配備計画の停止をめぐり、政府は24日、安倍総理大臣と関係閣僚が出席して、NSC=国家安全保障会議を開き、河野防衛大臣が、停止を判断した経緯などを報告しました。

これを受けて自民党は25日朝、安全保障に関する会議を開き、河野大臣は「国家安全保障会議で議論をいただいた結果、山口県および秋田県への『イージス・アショア』の配備を撤回する決定に至った。こうした事態に至ったことを、深くおわび申し上げる」と述べ、山口県と秋田県への配備を断念したことを明らかにしました。

そのうえで、「昨今の東シナ海の情勢に鑑みて、イージス艦を弾道ミサイル防衛のみに充てるのも、決して、安全保障政策上、得策ではない。中・長期的に、どのようにしていくか、今から考えていかなければならず、党と政府の間でしっかりと意見交換しながら、前に進めて行きたい」と述べ、「イージス・アショア」に代わるミサイル防衛体制をはじめ、安全保障戦略の在り方を議論していく考えを示しました。

会議では防衛省の担当者が、「イージス・アショア」を他の場所に配備することについては、安全確保や工期などの観点から、困難だと説明しました。

出席者からは「地元に『安全だ』と説明したのに、裏付けが不十分で、一連の対応は不適切だ」といった苦言が出されました。

一方、自民党の安全保障調査会長を務める小野寺・元防衛大臣は会議の冒頭、「党としても、ミサイル防衛について、もう一度、どのような体制が必要なのか、プロジェクトチームを作り、議論したい」と述べ、「敵基地攻撃能力」の保有の是非も含めたミサイル防衛体制について、党として議論する考えを示しました。

出席者からは「敵基地攻撃能力」の保有について、慎重な意見が出された一方、「反撃する能力を幅広く持つことが抑止力の向上につながる」とか「攻撃する場所を特定する、情報収集能力も高めるべきだ」といった意見も出されました。

自民 小野寺元防衛相「抑止の考え方も必要」

自民党の安全保障調査会長を務める小野寺元防衛大臣は、記者団に対し「北朝鮮の脅威は何も変わっていないのに、代わりにどのような対応を取るかについて、政府から説明は無かったので、早く対応してほしい」と述べました。

そのうえで、「ミサイルを食い止めるための抑止の考え方も必要なので、党のワーキングチームで議論し、できれば来月中には考え方をまとめたい。防衛大臣経験者も含めて議論するので、予断を持たず、深い議論の中で一定の結論を出したい」と述べました。

自民 中谷元防衛相「敵基地攻撃能力の議論を」

自民党の中谷・元防衛大臣は、記者団に対し「将来を見越して配備計画を再検討する必要はあったし、地元の対応で問題が出てきたので決断は評価できる。『敵基地攻撃能力』を持つことは自民党ですでに提言しているので、そういった前提で、具体的にどうするのか、議論しなければならない」と述べました。

自民 佐藤前外務副大臣「日本もある程度の能力を」

自民党の佐藤正久前外務副大臣は、記者団に対し「今回の判断は残念だ。『イージス・アショア』がなくなっても、同じように、24時間・365日、国民を守れる装備が必要だ。また『攻め』と『守り』の部分では、『盾』を厚くするとともに『矛』についても、日米の役割分担の中で日本もある程度の能力を保持すべきだ」と述べました。

イージス・アショア配備計画とは

防衛省は、イージス・アショア2基で日本全域を効果的に防護するには秋田県付近と山口県付近に配備する必要があるとして、当初、山口県萩市にある自衛隊のむつみ演習場と、秋田市にある自衛隊の新屋演習場を配備の候補地としていました。

防衛省は地元と調整するなどしてきましたが、このうち秋田市の演習場については、防衛省のずさんな調査などで地元で反発が広がり、候補地をゼロベースで検討するとして、再調査を行ってきました。

さらに今月15日、河野防衛大臣が、山口県と秋田県への配備計画を停止する考えを表明していました。

米 ミサイル防衛強化に日本と協議の見込み

アメリカ政府は反応を示していませんが、引き続き日米の協力を重視し、ミサイル防衛能力の強化に連携して取り組む方策を協議するとみられます。

イージス・アショアの配備計画の停止をめぐっては、国防総省のミサイル防衛局のヒル局長が23日、講演で「軍事施設の建設に関わったことのある者なら、地元の自治体がいかに敏感になるか理解している。日本政府を尊重したい」と述べて、日本政府の最終的な判断を見守る姿勢を示していました。

そのうえでヒル局長は「選択肢はいくつかあり、われわれは一緒に取り組むつもりだ」と述べ、日米の協力を重視する考えを示しています。

国防総省としては計画断念の決定を受けて、今後、これまでの配備計画に代わる方策も含めて、日米のミサイル防衛能力の強化に連携して取り組む方策を協議するとみられます。