けさ1番のハイライトは、新型コロナウイルス用のワクチン開発が大きく前進しているというニュースだろう。色々なメディアがこのニュースを取りあげており、暗いニュースが多いなかで久しぶりに明るい話題だ。ニュースというのは不思議なもので、明るいニュースが一つあると同類のニュースが次々と目に飛び込んでくる。英国のアストラゼネガとオックスフォード大学が共同で開発しているワクチンの初期治験で有望な結果が出たことが最大のニュース。これに引っ張られるように同国の大学発創薬ベンチャー・シネアジェン、中国のカンシノ・バイオロジクスなども治験で良好な結果を出している。世の中一気に明るくなったような気がするから不思議だ。

アストラ・オックスフォード連合が取り組んでいるのは最有力とみられているワクチンの一つ。ロイターによると抗体とT細胞による免疫反応を誘発するワクチンだという。ブルームバーグによると治験には「18-55歳の健康な成人1077人が参加」したとある。副作用はほとんどなく大半の治験者で抗体細胞が増殖したという。早ければ年何にも実用化可能とメディアは煽るが、現実はそんなに簡単ではないだろう。それでもウイルスとの戦いが一歩前進するのは明るい材料だ。このほか、時事通信によると米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬品企業ビオンテックも20日、新型コロナワクチンの初期の治験で好結果が得られたと発表している。

きのうからきょうにかけて、なぜワクチンに関連したニュースが多いのか、理由は判然としない。おそらくニュースに敏感に反応する記者の習性で、同類のニュースに視点が飛ぶのだろう。そしてほとんどの記事が期待と希望を呼び起こすような書き方をする。たとえば、「治験で良好な結果を得た」といった具合だ。専門知識のない読者はこれに素直に反応する。かくいう筆者もその一人だが、これで「ウイルスとの戦いに勝てる」と単純に思い込む。だが事実はそんなに甘くはないのだろう。ブルームバーグは「今回の結果は市場を納得させるほどの内容ではなかった」と指摘する。理由はマーケットの反応だ。市場の冷静な反応が正しければ筆者の期待は「糟喜び」ということになる。果たして結果はどうなるか・・・。