23日に時事通信が配信したニュースが気になっている。気になっているというよりは、「へー、こういうことがはじまるのか」ちょっと驚いたというのが正直な印象だ。タイトルは「120人に3年間、月15万円 独でベーシックインカム実験―新型コロナ」とある。コロナ禍で貧富の格差が一段と広がりそうな雰囲気になっているが、ドイツ経済研究所が(D I W)「ベーシックインカム」(最低限所得保障制度)の有効性を調べるための実験を始めるというのだ。日本的に言えば「働かざるもの食うべからず」だが、ベーシックインカムは「働かなくても食える」制度である。日本の年金制度のようなものだが、年金は受給者が前もって掛け金を支払う。これに対してベーシックインカムは、一方的に国(今回はD I Wだが)から一定の金額がもらえる制度。その制度の有効性を探るという興味深い実験である。
実験を担当するのはDIW( ドイツ経済研究所)。記事によると「(同研究所は)18日から、独在住で18歳以上という条件のみで参加者を募集。希望者が殺到し22日時点で120万人に達した。応募者から年収や家族構成などを考慮し、給付を受ける120人と、給付なしで比較対象として参加する1380人を選ぶ。給付は来春からで、参加者は半年に1回、オンラインで労働状況や時間の使い方などの質問に答える。1回の所要時間は25分ほどという」とある。募集対象の120人に対して応募者が4日間で120万人に達したというからすごい。半年に1回質問に答えるというオブリゲーションはあるが、何もしないで15万円もらえるわけだから誰でも応募したくなる。
財源は寄付で賄うという。15万円を120人に毎月支払うわけだから、最低でも毎月1800万円、年間では2億1600万円の財源が必要になる。3年間だと総額6億4800万円だ。日本の特別定額給付金は1回だけで12兆円を超える財源を要した。それに比べれば少ない。120人対1億2000万人を比べても意味はないが、実験としては驚くような金額ではない。財源問題はとりあえず置くとして、ベーシックインカムのもう一つの課題は「対象者は働かなくなるのでは」という懸念だ。労働を提供しないで金が稼げるのだから、怠惰な人間はより怠惰になるというわけだ。果たしてそうだろうか。最低限の生活が保証されれば、欲深い人間は「もっと稼ぎたい」と思うようになるのでは。今回の実験で人間の欲深さが証明されれば、経済政策の流れに変化がでるかもしれない。
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