きょうはトランプ大統領が共和党の大統領候補として指名受託演説を行うことになっている。内容を見るまでもなく民主党のバイデン候補を攻撃し、己の実績をこれみよがしに誇示、最後は「Make America Great Again」で締めくくるのだろう。目に見えるようだ。それはともかくとして、今回の大統領選挙に関する報道を見ながら興味を引いたことがある。米国の二大政党である民主党も共和党も党内に分裂の危機を抱えていることだ。民主党の危機は左右の分裂。共和党はトランプ大統領に対する反感をベースとした感情的な対立だ。少し前に時事通信は共和党内の「反トランプ運動」に焦点を当てた記事を書いていた。それによると「米共和党がトランプ大統領支持を前面に押し出した選挙戦を進める中、同調を拒否する旧来の党員や支持者らによる『反トランプ運動』も活発化している」という。

その一つが「リンカーン・プロジェクト」だ。共和党の政治戦略家らが政治資金団体として立ち上げたもので、創設者の一人である政治評論家リック・ウィルソン氏は、「一言で表すと(トランプ氏は)『災い』だ」「トランプ氏は米国と共和党にとって重大な脅威だ」とトランプ氏を酷評している。団体名はリンカーン元大統領に由来するのだが、この団体にはトランプ氏側近のケリアン・コンウェー大統領顧問の夫ジョージ・コンウェー氏も参加。中心的役割を果たしているという。これでだけではない。「トランプに反対する共和党有権者」という団体もある。今月には現政権下で国土安全保障省首席補佐官を務めたマイルズ・テイラー氏が、「高潔さと刷新のための共和党政治連合」という反トランプ組織を立ち上げている。

共和党のベテラン党員の中にもパウエル元国務長官やロムニー元大統領候補などあからさまにトランプ大統領を批判している勢力もある。こうした動きを見ていると左右の対立が取り沙汰されている民主党に比べ、共和党の内部対立の方がはるかに深刻に見える。大統領選挙を行う前に結果が出ているようなものだ。だが、それほど単純ではないのが米国の大統領選挙。最近ネット上で「Qアノン」なる謎の組織が勢力を拡大しているという。極右との説もあるこの組織、大統領選挙ではもちろんトランプ大統領を支援しているようだ。一説によるとQアノンは共和、民主といった政党にとどまらず官僚やメディアなど既成勢力に異議を唱えているとも言われる。要するに反エスタブリッシュメントということだ。4年前の大統領選挙でトランプ氏が打ち破ったのが既成概念である。隠れトランプは意外に多いような気がする。