菅内閣がスタートした。自称「国民のために働く内閣」である。政権のど真ん中に行政改革を位置付ける。担当大臣に就任した河野太郎氏は官邸で行われた記者会見で「延々とここで(記者会見を)やるっていうのは前例主義、既得権、権威主義の最たるものだ。こんなものさっさとやめたらいいと思う」と記者団に一撃を喰らわした。この一言で菅首相が思い描く規制改革の本気度が分かった気がする。メディアの前打ちでは総務大臣が内定していた。蓋を開けてみれば行政改革担当そうである。閣僚としての序列も下の方だ。外務大臣、防衛大臣経験者をそのポストに持ってくる。「破壊するのが河野の仕事」、側近に漏らしたその一言の意味が、すっきりと腑に落ちる。「縦割り、既得権益、前例主義」の打破を一丁目1番地に掲げる菅政権、まさに適材適所だ。

内閣が発足した日はいくつもの記者会見がお行われる。朝日新聞の記事によると「菅義偉首相が午後9時に初の会見を開いた。その後、初閣議が開かれ、加藤勝信官房長官の会見が始まったのは午後10時50分ごろ。これを皮切りに、菅内閣で就任した閣僚20人が順番に会見した」。場所はもちろん官邸である。河野行革担当は15番目、最後の井上信治・万博担当相が会見を終えたのは午前1時45分だった。この間、閣僚は控室で待機。記者は本社にいるデスクも含めて深夜勤務手当ての時間帯だ。河野大臣は開口一番「さっさとやめたらいい」と狼煙をあげた。「延々とここで(記者会見を)やるっているのは前例主義、既得権、権威主義の最たるものだ」(産経新聞)と喝破した。その通りだ。今朝この記事を見ながら一人でほくそ笑んでいた。

菅内閣誕生をメディアはどう伝えている。とりあえず朝日新聞をみると、「菅内閣は守りの布陣 目玉は『異端児』と『デジタル通』」とある。「異端児」は河野氏のことだ。初会見での一撃がデスクの頭にあったのかもしれない。「通」は平井卓也デジタル担当相。斜に構えたいかにも朝日新聞らしい見出しだ。菅内閣の目玉人事をくさしている。河野会見の続き、「この記者会見も各省に閣僚が散ってやれば、今ごろみんな終わって寝ている」(同)。その通りだ。要するに新聞社に代表されるメディアは「前例主義、既得権、権威主義」の権化なのだ。働き方改革に逆行し、日本の生産性を貶めている。にもかかわらず大上段に振りかざして官邸での会見を前例に倣って要求する。既得権と権威主義の塊で、日本の足を引っ張っている。そんなこともわからないまま普通の発想をする河野氏を「異端児」とレッテルを貼る。女性初の内閣広報官に就任した山田真貴子氏がまずやることは、記者会見改革だ。国会改革と同じぐらい難しいだろう。