菅内閣が発足して早くも1週間が経過した。デジタル庁創設など規制改革を1丁目1番地に掲げて「国民のために働く内閣」をスタートさせた。今週に入って国際舞台にもデビュー。米国のトランプ大統領をはじめオーストラリアのモリソン首相、ドイツのメルケル首相、E Uのミッシェル大統領など各国首脳との電話会談もこなしている。そして昨日は韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領とも会談した。産経新聞によると首相は文氏に対し、韓国最高裁のいわゆる徴用工判決などで日韓関係が悪化したことを踏まえ「非常に厳しい状況にある両国の関係をこのまま放置してはいけない」、「韓国側において日韓関係を健全な関係に戻していくきっかけ」を作るよう求めたという。

 会談終了後、首相は官邸で記者団に「さまざまな問題に関するわが国の一貫した立場に基づき、今後とも韓国に適切な対応を強く求めていきたい」と強調。一方で「日韓両国はお互いにとって極めて重要な隣国であり、北朝鮮問題をはじめ日韓、日米韓の連携は重要だ」と語った。記者のぶらさがりに応じたものだが、菅首相の発言はまるで安倍前首相のデジャブーのようだった。一方、韓国の聯合ニュースによると文大統領は「菅首相の就任を機に、強制徴用など両国の懸案の解決に向けた意思疎通の努力を新たな気持ちで加速させよう」と呼び掛けたと伝えている。韓国は今年、日中韓首脳会議の議長国。年内に首脳会談を開催したいとの思惑もあり、対日関係の改善に意欲を示す。これに対して菅首相は「ボールは韓国にある」と突き放す。“ゴネ得”に応じない日本の姿勢は前政権で確立している。日本人の多くが当たり前のことだと思っている。

そんな中で気になるのは朝日新聞の見出しだ。「日韓、好転のきざし見えず 菅首相、文氏と初の電話協議」とある。事実関係を淡々と伝えているに過ぎないが、本文を見ると「元徴用工問題をきっかけに悪化した日韓関係について、首相は『このまま放置してはならない』と伝えた。ただ、『関係改善は韓国の対応次第』とする安倍政権の姿勢を引き継いでおり、好転するきざしは見えていない」とある。好転の兆しが見えないのは「安倍政権の姿勢を引き継いでいる」からであり、責任は日本にあるような印象を拭いかねない。日韓関係を悪化させたのは慰安婦や徴用工問題をめぐり文政権の対日政策にある。そこをはっきりさせておかないと、日韓関係は再びいつか来た道の“ゴネ得”関係に戻りかねない。朝日新聞の記事ににじむ菅政権に対する関係改善要求は、日韓関係の真の関係改善に役立たない気がする。