総務省は昨日、「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を発表した。テレビでこのニュースを見ていたら、武田総務大臣が寡占状態に陥っている携帯市場について語気を強めて批判していた。大臣の発言に内心強く同感。個人的にはスマホ契約をめぐってトラブルの連続だった。原因は押しつけ販売に近いキャリアーの営業姿勢にあった。一言でいえば「ユーザー本位」の販売姿勢ではなかったということだ。なぜそうなったか。競争とは無縁の寡占状態の中で、3大キャリアーがユーザーの囲い込み競争に走ったせいだ。結果的に何が起こったか。料金が高止まりしたまま、乗り換え手続きが煩雑化し、挙げ句の果てに不必要なコンテンツの押しつけ販売が横行したのである。歌を忘れたカナリアに未来はない。

武田発言は以下のとおりだ。「日本社会全てが本気でモバイル市場を見つめていなかったのではないか。それに対して、問題提起をして、多くの国民が携帯電話に対する考え方をあらためて考え直した。良いきっかけになったのではないか」。菅官房長官時代に携帯料金は3割ほど下がっている。それでもまだ割高だ。そうした状況を踏まえた上での総務大臣発言である。社会全体が本気で市場を見つめていなかった、そこが問題だ。政府の方針に沿って値下げするキャリアー、その裏で不必要なコンテンツを販売し、料金の低下を補った営業姿勢。日本の携帯市場は通信機器のあるべき姿を忘れ、通信の飾りに過ぎないコンテンツと囲い込み競争、挙げ句の果てに手続きの煩雑化を招いた。携帯の料金表を理解できない人はおとんどいない。ユーザーはいつも泣き寝入りだ。

競争がなくなったのは携帯だけではない。新聞は再販制度に守られていて、もともと価格競争がない。結果的にどの新聞も内容は似たり寄ったり。特ダネ競争はほとんど見られなくなった。闘いもなくなった。最たるものは春闘だ。労働組合は賃金を要求しなくなった。結果的にデフレが長引き、企業は内部留保を手厚くした。Eコマースを初めネット社会は競争であふれているように見える。だがメールの企業情報は大袈裟なポイント還元を宣伝する不必要な情報ばかりだ。挙げ句の果てにサポートセンターに電話をすればつながらない。ようやくつながった電話も、「担当部署が違います」とたらいまわしにされる始末。要するに日本の企業は「本気で市場を見つめていない」のだ。政府が介入しないと企業はベースアップもしないし、料金も下げない。日本経済の低迷が続くのは当然かもしれない。これでは消費者もユーザーも働き手もたまったものではない。