米大統領選挙は事実上バイデン勝利で決着した。あとは健闘虚しく敗れたトランプ大統領の敗北の儀式が続くのだろう。勝つこと同様に「どう負けるか」、負け方の儀式は大統領本人ならびに熱狂的な支持者にとって不可欠なセレモニーだ。最終決着まで多少時間がかかるだろう。静かにそれを見守るのが敗者に対する礼儀かもしれない。まかり間違って暴力に訴えるようなことがあってはならない。平穏に敗北の儀式が終わるのを祈りたい。バイデン陣営はすでに政権移行に向けた準備を開始した。TBSによると政権移行チームは、「バイデン政権が翌日から動き出せるように全速力で準備を続ける」と表明した。来年1月20日の就任式まで残り2カ月ちょっとしかない。国内外に問題は山積している。急いで当たり前。世界は一瞬たりとも待ってくれない。

そこで勝手にバイデン大統領に期待する経済政策を考えてみた。正直いって政権が共和党から民主党に移ったからといって、内政・外交の重要政策が大きく変わることはいない気がする。米中は引き続き緊張感が維持されるだろうし、アメリカファーストの各種政策がガラリと変わることもない。同盟国を大事にするとか、マイノリティーや弱者に対する言葉遣いがマイルドになるという期待感はある。だが、移民政策がオバマ時代に戻ることもないだろうし、北朝鮮政策はトランプ政権以上に厳しくなるような気がする。反対に環境政策はパリ協定復帰を手始めにトランプ政権とは大きく変わるだろう。だが、メディアの見通しによると議会上院は引き続き共和党が過半数を占める見通しで、期待された「ブルーウェーブ」は実現しそうにない。それが逆に増税路線に歯止めをかけるとしてマーケットの期待感を煽っている。

そんな中で経済政策として個人的に注目しているのは、民主党の「大きな政府論」だ。バイデン氏は選挙戦を通してインフラ整備や環境対策として、1期目の4年間で2兆ドル(約210兆円)を投資するという公約を掲げている。トランプ時代はメキシコの壁が注目されたが、米国のインフラは老朽化が目立っている。的を射た計画だと思う。問題は財源。コロナで財政赤字は大幅に拡大している。だが、その財源も心配することはないだろう。サンダース議員の経済顧問をしているステファニー・ケルトン氏がいる。彼女はMMT推進論者である。彼女を経済政策のキーパーソンに起用すれば、トランプ大統領とは違った視点からMake America Great Againが実現できるかもしれない。極端から極端に触れたオバマ、トランプの12年間とは異なる視点、違った考え方、将来を先取りするような経済政策。そのんな変化を期待したい、のだが・・・。