日銀が地方金融機関に対する支援策をまとめた。地銀や信金が保有する日銀当座預金に0.1%の追加的な付利を行うというもの。菅政権が掲げる地方金融機関の再編・強化策を意識した方策である。首相はすでに「地方金融機関は多すぎる」との問題意識を表明している。多くの地方で高齢化が進み、人口が減少している。このままいけば融資は尻すぼみとなり、地方金融機関は数だけではなく働く人の整理縮小が避けられなくなる。そこを金融面から支援し、地方金融機関の体質強化を図ろうというわけだ。金融政策としては時宜を得たものである。政府・日銀が一体となって地方金融機関の強化に努めることは、地方創生にもつながる。とはいえ、これだけでは足りない。地方の活性化に向けいま必要なことは、時の流れ汲み取って大胆に政策を転換することだ。金融に止まらず、地方に人口がシフトするような発想、プラットフォームが必要だろう。

日銀が地方金融機関の準備預金に付利するための条件は2つある。1つは「経費率」の一定比率以上の改善(3年間で4%以上など)、2つ目は経営統合などで「経営基盤の強化」を図ること-いずれかの条件を満たすことが必要になる。地方金融機関の体質を強化し、その上で地方に存在している企業や個人への融資を増やし、地方の活性化を側面から支援しようというわけだ。金融支援の定番といっていい。個別企業の経営が行き詰まった時に、融資の回収に向けて金融機関が行う常套手段である。だが、いま必要なのはそういうことだろうか。経費率の改善といえば聞こえはいい。だが、実態は合理化である。合理化の最たるものは人減らしだ。店舗閉鎖という手もある。合併による経営基盤の強化も結局は壮大な人減らしとみていいだろう。ただでさえ人口減少に悩んでいる地方の金融機関が、日銀の支援を受けるために合理化を徹底する。地方景気が一段と落ち込まないか、気になる。

コロナ禍で都心離れの機運が出始めた。車離れが指摘されていた若者の車回帰もはじまっている。自動車メーカーによっては生産が追いつかないところも出ている。地方創生にフォローの風が吹き始めている。この風を敏感に感じとって政策に反映させる必要がある。例えば、都心から田舎への転居を支援する「田舎転居ローン」はどうだろうか。本社機能を地方に移転した企業に対しては政府が移転減税を用意する。研究所を地方に移し、きれいな空気や緑に囲まれた環境でじっくり研究に取り組んでもらったらどうだろう。素人の浅知恵にすぎないが、要は金融支援と財政出動を組み合わせ、それに民間活力を絡ませる。そんな総合的な支援策が必要ではないか。個別の政策を単独でいくら繰り出しても限界がある。全体最適が実現すれば合理は後回しできる、政府・日銀はそろそろそんな手法の導入を検討すべきではないか。