米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は17日、「新型コロナウイルス感染の急拡大は米景気回復に対する大きな懸念で、米経済は財政政策と金融政策の双方の支援を引き続き必要としている」(ロイター)との考えを示した。オンライン形式で開かれたカリフォルニア州のベイ・エリア・カウンシルのイベントで講演したもので、一段の財政政策による支援が必要との見方を示した。当たり前のことを言っているような気がするが、前日に行われたブルームバーグのニューエコノミー・フォーラムの討論内容と重ねて見ると、「中央銀行はもはや何もできない」と言っているように聞こえる。そこまでいうのは言い過ぎかもしれないが、コロナ禍での財政と金融の役割が改めて問われている気がする。
新型コロナウイルスが急拡大する中でパウエル議長は、「景気回復支援に向け、必要な限りあらゆる政策措置を利用していく」強調しているが、同議長の狙いは共和党と民主党が対立している追加の経済対策の早期実現を求めたものと言っていいだろう。経済の回復にとって財政と金融は車の両輪である。どちらが欠けても景気の順調な回復は期待できない。にもかかわらず米国では共和党と民主党が対立、追加対策の決定に手間取っている。金融政策よりいまは財政政策の方が重要だ。議会は何をしているのか、パウエル議長ならずとも米国民の悲痛な叫びが聞こえてくるような気がする。ブルームバーグが主宰した前日のフォーラムにはイエレン前FRB議長や、サマーズ元財務長官らが出席している。ここでも財政出動が議論の焦点になった。
バイデン政権で財政を取り仕切る財務省の長官候補として名前があがっているイエレン前F R B議長は、先進国経済が直面している中核的な問題は「貯蓄過剰と投資不足」と指摘。その上で「健全な成長を達成するには、中銀に頼るだけでなく財政政策や構造政策も動員しなければならない」と語っている。これが前議長の本音なのだろう。景気を動かすのは金融政策ではなく財政政策だと言っている。その通りだと思う。世界中で金融当局はゼロ金利や量的緩和を追求しているが投資不足でカネ余り状態が恒常化、サマーズ元財務長官が指摘する長期停滞から脱却できない。投資不足を解消するためには需要を作り出すしかないわけで、その役割は金融ではなく財政である。財政健全化という考え方を短期的にではなく長期的に捨て去らないと、デフレ気味の世界経済はいつまで経っても回復しないだろう。
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