英国政府はきのう、世界に先駆けて新型コロナワクチンの投与を開始すると発表した。ロイターによると「英政府は2日、米ファイザーが独ビオンテックと共同開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。来週から接種が始まる見通しだ。ファイザーの新型コロナワクチンの承認は世界初で、米国や欧州連合(EU)に先駆けて接種が始まる」とある。コロナで死者が急増している英国。ジョンソン首相には焦りもあるのだろう。電光石火のワクチン投与といっても過言ではない。安全性は、ワクチン配送の準備は、英国民はワクチン投与をおとなしく受け入れるのだろうか。他国のことながら心配になる。英政権は功を焦っているのではと思いつつ、これがブレグジットの成果かもしれない。ジョンソン首相は、E U離脱のメリットを国民に知らしめようとしているのではないか。

世界中で政権がコロナワクチンの早期投入を目指している。トランプ大統領は誰はばかることなく「大統領選挙の前」「早ければ11月中」「遅くても年内」と、ワクチン投与時期を前のめりに力説していた。これに引っ張られたわけではないだろうが、感染症の権威である国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長も、聞かれれば「早期投入は可能」と仄かしていた。ロシアのプーチン大統領はすでにワクチンの投与を実行に移している。各国がワクチンの開発・投与で鎬を削っているのだ。そんな中で英国は堂々と先陣を切った。自らコロナに感染したジョンション首相の誇らしげな顔が思い浮かぶ。英国医薬品庁(MHRA)は「ローリング・レビュー(逐次審査)」を実施し、「治験データの入手と同時に審査を進めていた」とこの間の経緯を説明している。決して功を焦っているわけではないというわけだ。

MHRAのレイン長官は「いかなる手続きも省いていない」と強調。「安全がわれわれのモットーだ」とも述べている。安全性を疑っているわけではない。英国がE Uに残留していたらどうなっていたのだろう。E Uもすでにメーカーと導入契約を結んでいる。ファイザーが提供するワクチンは治験で95%の安全を示しており、あとは使用許可にむけた正式な手続きを踏むだけの状態だ。各国とも緊急条項を発動しこの手続きのスピードアップを図っている。とはいえ、生命に直接影響するワクチンの認可である。それなりに時間はかかる。そこを英政権は猛スピードで駆け抜けた。E Uに残留していればこうはいかなかっただろう。ジョンソン首相の胸の内を忖度すれば「早期承認はE U離脱の成果」と言いたいのかもしれない。それはともかく、英国とE Uのサヤあては当分続きそうな気がする。