きのうのニュースで目立ったのは、新型コロナウイルスの陽性者のうち98%が中和抗体を獲得していたという研究データだ。発表したのは横浜市立大の山中竹春教授らの研究チーム。コロナウイルスに感染して回復した376人について、感染から半年後に採血し、再度の感染を阻止する「中和抗体」があるか調べた。結果は98%の人が中和抗体を獲得していたと。この抗体の有効性がいつまで続くのか、現時点では分からない。同大では感染から1年後の時点でも中和抗体があるか、調査を継続するという。中和抗体を獲得する確率が高ければ高いほど、集団免疫が機能する確率が高くなる。相変わらず先が見えない新型コロナウイルスだが、これはワクチンにつぐ朗報と言っていいだろう。

ワクチンの方は外野席がかまびすしくなってきた。英国が2日にファイザーとビオンテックが開発したワクチンを承認したことに対し、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が3日「(英当局が)非常に綿密な審査を怠り、ファイザーから入手したデータをそれで良しとし、承認した」(ロイター)と批判した。これに対して英国医薬品庁(MHRA)のレイン長官は、「いかなる手続きも省いていない」と反論。MHRAも声明を発表し、「完璧な審査プロセスを怠ることなく、最短期間でデータを綿密に精査した」と反撃した。どちらの言い分が正しいか素人にはわからない。ただ、インフルエンザワクチンの有効性は50%程度と指摘する専門家もいる。それに比べて95%の有効性を誇るファイザー・ワクチンは驚異的な数字を叩き出している。審査手続きの有効性よりワクチンの効能に「本当なの」、疑問を投げかけたくなる。

そのワクチンはマイナス70度の超低温で10日間保存できるそうだ。日経web版によるとワクチンの運搬は「専用の冷凍ボックスに入れて配送する。ボックスは1千~5千回分のワクチンをマイナス70度で10日間まで保管でき、全地球測位システム(GPS)で追跡できる」という。人類の命を救うワクチンだ。大変なのはデータ精査だけではない。運搬も保管もおおごとだ。運搬は「専用の冷凍ボックス」でやるにしても、病院も専用の冷蔵庫が必要になる。そんな中で陽性者のほぼ100%が免疫を獲得したというニュースをみると、改めて人体機能の素晴らしさを実感する。感染者の8割は無症状だ。これに集団免疫という考え方を掛け合わせれば、新型コロナ「恐れるに足らず」ということにならないのか。どこまでも気になるコロナウイルスである。