英国は8日、先進国で初めてコロナワクチンの投与を始めた。第1号は90歳の女性、マーガレット・キーナンさん。テレビの映像を見る限り90歳にしては元気そうに見える。彼女は瞬時に世界中に名前が知れわたった。おそらく後世史家がコロナの歴史を繙くたびにこの場面は取り上げられるだろう。マーガレットさんは歴史にその名を記したことになる。それはそれとして、新型コロナワクチン、投与しますかと聞かれたらどう答えるだろう。たぶんそういう機会が巡ってきたら個人的には受けると思う。だが、世の中には絶対受けないという人もいる。治験結果が良好だったとはいえ、まだわからないことがいっぱいある。ロイターによると世界保健機関(WHO)の幹部であるマーガレット・ハリス氏は「ある種の免疫バリアを提供するという意味でのワクチン効果はまだまだ」と述べている。

ファイザー製のワクチンは世界で約4万人を対象に治験を行ったと報道されている。この数がこの種のワクチンの治験として多いか少ないかわからないが、いつも疑問に思うのはこのうち日本人は何人含まれているのだろうということだ。コロナウイルスに感染すると免疫ができる。免疫を獲得する人体の機能はおそらく人類にとって共通の機能なのだろう。だが人間には個性がある。人種によっては食べ物、習慣、平均気温や湿度、空気の濃度、鮮度、気圧など生活環境は微妙に異なる。免疫を獲得するという機能は同じでも、精密機械のような体のバランスはちょっとしたことで崩れる。そんな人体の微妙なバランスを無視してこのワクチンは誰にでも効くのだろうか。ふとそんな疑念が湧いてくる。せめて4万人と言われている治験者の中に日本人は何人いるのか、そのくらいでのデータは公表して欲しいと思う。

先進国では英国がワクチン投与の一番乗りを果たした。ジョンソン首相はEU離脱のメリットをアピールしたいのだろうとの推測は以前に書いた。ロイターによると英国のコロナによる死者は、直近で6万1000人超と欧州で最悪の状況に見舞われている。実体的にはこうした現実がワクチン投与を急がせるのだろう。英国より早くロシアが投与を始めている。中国もすでに投与を始めているとの説もある。米国も投与を急いでいる。要するに死者の数が多い国ほど投与を急ぐ傾向がみられる。相対的に死者数が少ない日本。だが、医療体制は欧米先進国に比べて圧倒的に見劣りする。第3次感染ですでに逼迫感がではじめている。菅政権もできるだけ早く投与を始めたいと考えていることだろう。WHOのハリス氏は「ワクチン効果はまだまだ」と指摘している。ロイターによるとWHOは「16歳以下や妊婦、免疫力が低下している人への接種が安全かどうかを示すデータは現段階で不十分」と指摘している。