菅政権は昨日、21年度予算案を閣議決定した。一般会計予算の総額は106兆6097億円、3年連続で100兆円を超える大型予算。ただ新型コロナ対策として盛り込んだ予備費5兆円を除くとその規模は101兆円となり、今年度の当初予算102.7兆円を下回る。今年度は3回の補正予算を組んでいる。それを加えれば予算規模は175.7兆円となる。これと比較すれば大幅に下回る計算だ。新型コロナに伴う予算規模の膨張という特殊要因を除けば、さして驚くに値する予算ではない。むしろ、前例のない異常事態に直面すれば財政難の日本にもまだこれだけの予算を組める余力があるとみるべきかもしれない。緊急事態を前に財政再建を求める関係者の悲痛な叫びもほとんど聞かれなくなった。コロナ対応は責任を持ってやるべきだと思うが、日本を覆っているもう一つの病巣、デフレと消費低迷への打開策は相変わらずみえない。

大型予算の裏で国債の増発が続いている。日経新聞によると来年度予算での新規国債発行額は43兆5970億円に達する。国債依存度も20年度当初の31.7%から40.9%に拡大する。閣議後に記者会見した麻生財務大臣は、第2次安倍政権の発足時から続いていた依存度の低下が止まったことに「残念」と一言漏らしたそうだ。財政健全化に向けて旗を降り続けてきた当人としては悔しいのだろう。その気持ちはわからないでもないが、仮に財政再建が実現したとしても、その見返りに国民生活が困窮の度を強めるとすれば、政治家としてのレガシーに傷がつくだろう。問題は財政規模や国債の依存度ではない。国民生活が豊かになったか、ならなかったかだ。平成の失われた30年を経てわかったこと、それは国民の生活が苦しくなっているということだ。もちろん格差拡大の恩恵を受けた人もいる。だが、圧倒的多数の国民は生活の先行きに不安を感じている。

大型予算の内訳は社会保障費が35.8兆円、今年度当初予算比0.3%僧。防衛費5.3兆円、同0.5%増。公共事業6兆円、同11.5%減。地方交付税15.9兆円、同0.9%僧。国債費23.7兆円、同1.7%僧など。コロナ対策の予備費5兆円を除けばどれも微増に止まっている。公共事業は3次補正と合算すれば増えているだろう。国債は当然急増する。問題は予算の底流にある考え方が供給サイドにウエイトを置いていることだ。消費税率を2%上げても社会保障費が微増という現状は、経済運営の歯車が噛み合っていないことを示している。増税で国民から巻き上げた資金が、内部留保として企業に蓄積され、国民に還元されない。このアンバランスが国民窮乏化の最大の要因だ。コロナで国民の生活が一段と深刻になってきた。コロナ対策として家計(需要者)に財政資金を直接投入する。このルートを太くし、スムーズに実行する。これならコロナ対策をかねた日本経済の再生策にもなる。