昨日テレビのニュースを見ながら頭の片隅に引っかかった言葉がある。自民党の二階幹事長が記者会見の場で発したひとこと、「後からは誰でも何でも言えるんです」。緊急事態宣言の発令が日程にのぼったことを受けての発言だ。質問内容ははっきり聞き取れなかったが、趣旨は「緊急事態の発令が遅すぎたのではないか」、それに対する幹事長の考え方を聞き出そうというものだ。新型ウイルスの感染が連日過去最高を更新する中で、菅政権の対応は後手に回っているのではないか。メディアをはじめいろいろな人がそう感じている。自民党の幹事長としてどう考えているのか、質問した記者はその辺を確認したかったのだろう。それに対する答えが冒頭の一言である。政府は「真剣に取り組んでいると考えております」、そう付け加えたうえで「適切な判断」だったと評価したのである。

判断が適切だったかどうか、いろいろな意見があるだろう。個人的に注目したのはそこではない。「後からは誰でも何でも言える」この部分だ。二階氏の発言をそのまま鵜呑みにするわけではないが、世の中には後出しジャンケンで訳知り顔に物を言う人が多い。この傾向はテレビのコメンテーターに多い気がする。結果が出れば誰でも発言したくなる。例えば高校野球、1点差で9回裏、ワンナウト、ランナー1塁。監督はここで4番バッターにツーストライクからバントを命じる。結果は失敗。ツーアウト、ランナー1塁、押せ押せムードが一気に萎む。結果が出た後で多くの人が振り返る。「あそこはバントじゃない」、「4番には打たせるべきだった」、「まずは同点、バントは当然」。主張はそれぞれ、あと講釈にも熱が入る、それが野球の楽しみ方の一つでもある。後出しジャンケンも次の飛躍へのステップになる。

だが政治にあと出しはない。それを承知の上で政治家は、日々目の前で起こる出来事に対応せざるをえないのである。それを伝える記者も、書く記事も同類だろう。だが現実は後出しジャンケンが多いような気がする。もちろん結果が出る前に、事前に警鐘を鳴らしている専門家や政治家はいっぱいいる。それでも政治の決断には時間と手間暇がかかる。結果が出たあとでメディアやコメンテーターが強烈に後出しジャンケンをする。それを見たり聞いたりするのは正直、あまり気分がいいものではない。勝ち誇ったようにあと後出しジャンケンで力説する人を見ると余計に腹が立つ。だから最近はテレビのワイドショーはできるだけ見ないようにしている。「後出しジャンケンに気をつけろ」、二階発言に触発されながら、ささやかに己の戒めにしようと考えている。