【北京時事】中国が領海管理を強化し海洋権益を守る一環として「海上交通安全法」の改正作業を進めている。改正草案は、中国当局が「脅威」と判断した外国船に領海からの退去を命じる権利があると明記。中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島周辺で、従来の海警局に加え交通運輸省に属する海事局による活動を正当化する狙いがあるとみられ、緊張の高まりも懸念される。

 海上交通安全法は海上の航行や事故の対応などについて定め、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会が昨年12月、改正草案の審議を始めた。草案は「外国籍の船舶が領海の安全に脅威となる可能性があれば、海事管理機関は退去を命じる権利がある」とうたっている。

 現行法は「港の安全」を脅かす恐れがある船舶に対して、退去を命令する権利があると規定。法改正により、港に限らず、尖閣の周辺海域や南シナ海も適用対象となる。

 尖閣周辺では、中央軍事委員会の指揮下にある海警局の船舶が領海侵犯を繰り返し、日本の漁船を追尾するなどしている。今回の法改正は、海上交通の監督や安全管理を担当する海事局が海警局と連携した活動を活発化させる根拠となり得る。

 法整備と並行して、海事局の装備も増強が進んでいる。広東省政府は12日、排水量1万トンの大型巡視船が今年半ばに配備されると明らかにした。同船は航行速度25ノットでヘリコプターを搭載。北極や南極以外であれば世界のどの海域でも運用可能という。

 全人代は海警局の武器使用に関する権限を記した「海警法」草案も審議中だ。尖閣周辺だけでなく南シナ海でも中国当局の組織的活動が拡大する恐れがある。