【ロンドン時事】新型コロナウイルスの死者が欧州で初めて10万人を超えた英国で、政府の危機対応に問題がなかったか、大きな議論になっている。野党は政府が初動を迅速に起こさず「巨大な過ち」(最大野党労働党のスターマー党首)を犯したと批判。科学界でも、ジョンソン首相の判断ミスが感染拡大を招いたと責任を問う声が上がっている。

ワクチン輸出規制が波紋 国境問題再燃、英が反発―EU

 首相は26日、死者が10万人に達したことを記者会見で報告。悲痛な表情を浮かべながら「失われた一人ひとりの命に対し深く謝罪する。政府がしたことの全責任を負う」と述べた。一方で「できる限りのことはやってきたし、引き続きそうするつもりだ」と対応を擁護した。

 死者増大の背景には、(1)検査・追跡システムの整備が遅れた(2)外出制限導入・解除のタイミングを誤った(3)水際対策が不徹底だった―ことなどがあると指摘される。エディンバラ大のリンダ・ボールド教授(公衆衛生学)はBBC放送に、検査体制を確立しないまま規制解除を行うなど「まずい判断」が重なった結果、現状に至ったと指摘。医療セクターへの投資不足や健康格差など、社会が「もともと悪い状態に置かれていた」(疫学専門家)ことを問題視する意見もある。

 スターマー氏は27日の下院質疑で、「なぜ英国の死亡率は他国より高いのか。なぜ死者が欧州で最多なのか。首相はこれらの質問に答える必要がある」と迫った。これに対し首相は「これほどの困難なジレンマを抱える中、答えを見つけるのは容易でない」と反論。一方、遺族らからは、政府のコロナ対応を検証する独立調査実施への要求も強まっている。