世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2020年12月末時点の運用資産額は177兆7030億円で、19年末の168兆9897億円を上回り過去最大となった。新型コロナウイルス感染拡大に対応した財政出動や金融緩和を背景とする国内外の株高が寄与した。

  GPIFが5日公表した運用状況によると、10-12月期(第3四半期)の運用収益はプラス6.29%の10兆3528億円。3四半期連続のプラスで、収益率としては過去4番目、収益額は3番目の高水準となった。

GPIFの運用収益率

出所:GPIF

収益率10-12月期
運用資産全体6.29%
 国内債券0.02%
 国内株式11.27%
 外国債券1.21%
 外国株式11.88%

  昨年12月に日経平均株価が29年ぶり高値を更新し、米主要株価指数が過去最高値を記録するなど、内外株式の収益を押し上げた。株式の収益額は国内で過去最高、外国は過去2番目の高水準だった。

  自主運用が始まった01年度からの累積の収益率はプラス3.37%、収益額は85兆3011億円。

  三菱UFJ国際投信の石金淳チーフストラテジストは、GPIFは積極的なスタンスで「リスクを落とす感じではない」と指摘した。

  運用資産の構成比は外国債券が過去最高の25.71%と目標を上回った一方、国内債券は9月末時点の26.61%から23.64%に低下した。リスク管理強化のため今年度から公表を始めた国内外を合わせた構成比は株式が50.64%と、債券の49.36%を上回った。 

資産構成割合12月末9月末
国内債券23.64%26.61%
国内株式25.28%24.06%
外国債券(為替ヘッジなし)25.71%23.46%
外国株式25.36%25.88%
オルタナティブ(代替)資産0.67%0.60%

注:為替ヘッジ付き外国債券は国内債券に区分

ポートフォリオの推移

出所:GPIF

  GPIFは今年度から国内外の株式・債券の4資産にそれぞれ25%ずつ振り向ける新たな「基本ポートフォリオ」に基づき運用。金利低下に伴い国内債券の比率を減らし、相対的に金利の高い外国債券を10ポイント引き上げた。 

  一方、オルタナティブ(代替)資産は0.67%に増えた。基本ポートフォリオ上の上限は5%。GPIFは1月、オルタナティブ運用の強化に向け、プライベートエクイティ(PE、未公開株)の運用受託機関として三菱UFJ信託銀行とハミルトン・レーン・アドバイザーズを選定した。